『地下道の鳩 ジョン・ル・カレ回想録』 | 荒野に向かって、吼えない…

ジョン・ル・カレ著 『地下道の鳩 ジョン・ル・カレ回想録』 スイスのベルンから鉄道で一時間半ほどの山間の村にある小さな山小屋の地下室から、ジョン・ル・カレはこの回想を始める。『寒い国から帰ってきたスパイ』からの収入で建てたものだ。８０代半ばを迎えたル・カレの作家生活を見続けてきた小屋であり、二度の結婚生活や子供たちの成長を見続けてきた小屋でもある。思い返せば、この村に初めてやって来たのは少年時代のスキー旅行だった。オクスフォード大学時代には恩師のヴィヴィアン・グリーンとも夏山登山にやって来た。「彼はジョージ・スマイリーの内面のモデルだ」。パブリック・スクールから、何よりも父親から逃げ出すためにやって来たのもベルンであり、「生まれて初めて、イギリスの諜報機関とごく初歩的な立場でかかわったのも、ベルンにいたときだった」。１７歳で、「外国の大学で苦闘」していた少年は、「なんなりとお申しつけを！