エントリーの編集
エントリーの編集は全ユーザーに共通の機能です。
必ずガイドラインを一読の上ご利用ください。
記事へのコメント2件
- 注目コメント
- 新着コメント
注目コメント算出アルゴリズムの一部にLINEヤフー株式会社の「建設的コメント順位付けモデルAPI」を使用しています
- バナー広告なし
- ミュート機能あり
- ダークモード搭載
関連記事
逆行
太宰治 蝶蝶 老人ではなかつた。二十五歳を越しただけであつた。けれどもやはり老人であつた。ふつうの... 太宰治 蝶蝶 老人ではなかつた。二十五歳を越しただけであつた。けれどもやはり老人であつた。ふつうの人の一年一年を、この老人はたつぷり三倍三倍にして暮したのである。二度、自殺をし損つた。そのうちの一度は情死であつた。三度、留置場にぶちこまれた。思想の罪人としてであつた。つひに一篇も賣れなかつたけれど、百篇にあまる小説を書いた。しかし、それはいづれもこの老人の本氣でした仕業ではなかつた。謂はば道草であつた。いまだにこの老人のひしがれた胸をとくとく打ち鳴らし、そのこけた頬をあからめさせるのは、醉ひどれることと、ちがつた女を眺めながらあくなき空想をめぐらすことと、二つであつた。いや、その二つの思ひ出である。ひしがれた胸、こけた頬、それは嘘でなかつた。老人は、この日に死んだのである。老人の永い生涯に於いて、嘘でなかつたのは、生れたことと、死んだことと、二つであつた。死ぬる間際まで嘘を吐いてゐた
2005/05/16 リンク