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青空文庫 - 言語体の文章と浮雲
幸田露伴 二葉亭主人の逝去は、文壇に取っての恨事で、如何にも残念に存じます。私は長谷川君とは対面す... 幸田露伴 二葉亭主人の逝去は、文壇に取っての恨事で、如何にも残念に存じます。私は長谷川君とは対面するような何等の機会をも有さなかったので、親しく語を交えた事はありませんが、同君の製作をとおして同君を知った事は決して昨今ではありません。抑(そもそも)まだ私などが文筆の事にたずさわらなかった程の古い昔に、彼(か)の「浮雲」でもって同君の名を知り伎倆を知り其執筆の苦心の話をも聞知ったのでありました。 当時所謂言文一致体の文章と云うものは専ら山田美妙君の努力によって支えられて居たような勢で有りましたが、其の文章の組織や色彩が余り異様であったために、そして又言語の実際には却て遠(とおざ)かって居たような傾(かたむき)もあったために、理知の判断からは言文一致と云うことを嫌わなかったものも感情上から之を悦ばなかったようの次第でありましたが、二葉亭さんの「浮雲」に於て取られた言語体の文章は其組織や其
2006/02/07 リンク