『最底辺のポートフォリオ １日２ドルで暮らすということ』 Ｊ・モーダック他著 : 書評 : 本よみうり堂 : YOMIURI ONLINE（読売新聞）

一日平均一六〇円以下の収入しかない家計の暮らしはどのようなものだろうか。今の豊かな日本では想像もつかないだろう。ポートフォリオ（資産選択）などとはまったく無縁の「その日暮らしの生活」を送っているのではと考えがちだ。 本書はこうした私たちの思い込みを根底から覆してくれる。貧困層が直面する困難さは、少ない収入もさることながら、その不安定さや家計を管理する手段の劣悪さだ。そこから生まれる金融サービスへの基本的ニーズは、日常的な家計のやりくり、病気などリスクへの対処、まとまった資金の蓄えの三つに集約される。 こうしたニーズに従来型のマイクロファイナンスでは十分対応しきれない。そのため、貧しい人たちは身近にあって多少の不都合を聞いてくれるインフォーマルな金融を活用する。たとえば、親戚や友人間で無利息の貸し借りをしたり、「貯蓄クラブ」を作ってお金を出し合い、まとまった資金を順番に融通したりする。そこに

[SasakiTakahiro]

あらゆる手段を用いて綱渡りのように生き抜いていく合理的で逞しい姿が。