世界の平和を希求しながらも、私たちは海の向こうで始まった戦争に無力だ。なじみが深いとはいえない国の災禍に現実感を抱けないのに、スマートフォンで「情報」だけはかき集められ、いたずらに心が乱れる。大阪府吹田市の閑静な住宅街。作家の高村薫さん(70)を訪ねると、硬骨の社会派は言った。「私たちは、木の細部はよく見えながら、森の全体を全くつかめない時代を生きています」 今の世界のありようは、複雑にして残酷だ。ロシアのウクライナ侵攻。パレスチナ自治区「ガザ」での宗教を巡る戦争。ただ多くの人は、その実感を持ちづらいのではないか。「私だってございませんよ。私たち一般の日本人が持てるはずがありません」。高村さんは言い切った。 「地上には爆弾が落とされ、砲撃され、人が死んでいる事実は理解するけれど、それが『私』の身体を通した実感にはならない。そういう状況に当面は身を置きながら、私たちは戦争について考えるほかあ
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