あるとき、出版社勤務の人と雑談していたら、「最近どんな本を読みましたか?」と尋ねられました。その人とは初対面だったので、無難な共通の話題として、身近なはずの読書のことを持ち出したのでしょう。しかし、情けないことに私は、この質問に答えられませんでした。自分では、かなり本を読んでいるつもりだったのに、実際にはここ数年、急激に本を読むことが少なくなっていました。この「事件」のおかげで、あらためてそれに気づいて愕然としました。 このひどい失態のせいで、その出版社からの翻訳依頼が……いや、そのときはそんな相談をしていたわけではありませんが、いずれにしても、あまり良い印象は持たなかっただろうとは思います。その反省を兼ねて、私がなぜ本を読まなくなったのかについて考えてみます。 本を置く場所がない 昔は、毎日のように本屋に立ち寄って、ほとんど毎日のように本を買って読んでいました。あまり高尚な本ではなくて、