予告していたとおり、今回からIT資本の根本的な課題の解明を目的にした「8つのパラドクス」(サブパラドクスを含めると十数回分)を議論する。ただ、この知的クラスターは、IT資本の根源的な特性にさかのぼり、それを経済・経営学的に解明することをねらいとしているので、いささか数式などが出たりして難解な面もある。そのような表現が苦手な方はその部分は読み飛ばしていただき、全体の要旨と結論を理解していただければと思う。 その第1回目は「生産性パラドクス」と呼ばれているものである。これはこれからお話しするすべての「ITパラドクス」の帰結でもある。結局は、さまざまなITパラドクスが解消されて最後に企業・経済の生産性が向上すると考えるのである。 ノーベル経済学賞受賞者・R.ソローは、かつて「コンピュータはあらゆるところにはびこっているが、生産性の統計のところには表れない」といい、いわゆる「R.ソローの生産性パラ