鈴木啓太、鈴木隆行らが現役引退を明らかにした今シーズン終盤。J1昇格を争うチームの中で、やはりひとりの元日本代表選手が引退を決意していた。 <こんなになにも感じないのは初めてだ> 試合のメンバーから外れても悔しさがこみ上げてこないことに、彼は小さく愕然とした。昔の自分だったら、挑みかかるような反発心があった。 「ピッチに立ってなんぼ」 プロ19年間、その気概を貫き通してきた。人一倍、周囲に気を遣う男は、チームの和を乱す言動をしたことはなかったが、ユニフォームを着てピッチに立つことへの執着は強かった。その猛々しさが、知らない間にほとんど消え失せていた。 19年間のプロ生活に別れを告げ現役引退を発表した古賀正紘(アビスパ福岡)<ここが潮時かもしれない。心身共に、もうプロでやっていくレベルではないんだな> ふと自分を見つめ直したとき、彼はゆっくりと苦いものを飲み込むように、現実を自覚した。