九州大学(九大)などは3月8日、がん組織の温度に応答して薬剤分子を集める仕組みを開発したと発表した。 同成果は、九州大学大学院薬学研究院 唐澤悟准教授、荒木健氏、臼井一晃助教、量子科学技術開発機構 青木伊知男博士、村山周平博士らの研究グループによるもので、3月7日付けの米国科学誌「Nano Letters」オンライン版に公開された。 体内の薬剤分布を量的、空間的、時間的に制御する薬剤運搬技術であるドラッグデリバリーシステム(DDS)の研究が、がん治療研究のひとつとして進んでいる。従来のDDSは、血管に生じる「隙間」を利用して、数十~百nmサイズのナノ微粒子中に薬剤を内包させ、がん病巣へ薬剤を集積させるという手法が一般的だった。しかし、この方法では薬剤が正常な組織にも分布するため、副作用を発症するなどの問題があった。 今回、同研究グループは、がん組織が正常な組織よりも温度が高くなる性質をもつ