「その優雅なグレーの輪郭にはめ込まれたオフ・ホワイトのディスプレイには、飛びもチラつきもなく、くっきりとPalatinoの書体が映し出されていました。それはコンピュータで私たちが見たことのない光景でした。それは不思議なほどに「本」に似ていたのです。」 これは1991年に発表された電子本、Expanded Book(Voyager)に添えられていたパンフレットの一節である。90年代の電子本の例を待たずとも、柏原えつとむの『これは本である(THIS IS A BOOK)』や山口勝弘の鏡貼りの本『リベール リベール』など、60年代後半から70年代にかけて、おもに美術の分野で「本の在処」について多くが語られ、また作品として作られてきた。本の実態がそのボディにないということはすでに自明のことだが、しかし、ボディのない本もまた存在しない(たとえそれがスクリーンだとしても)。 そういった「本」の不可思議
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