ユダヤの逆説、ヨーロッパの逆説 ――テーオドール・レッシングの『ユダヤ人の自己憎悪』によせて―― ボリス・グロイス (中澤英雄訳) 〔解説〕 ヨーロッパには長い反ユダヤ主義の歴史が存在することはすでによく知られている。日本ではこれほど一般的には知られていないが、一八世紀後半以降ゲットーから解放された近代ユダヤ人には、自民族に対する敵意、いわばユダヤ人自身の反ユダヤ主義とでも言うべき現象が存在する。たとえば、詩人ハイネのユダヤ人に対する愛憎、哲学者マルクスのユダヤ人金融資本家への敵意、さらにはユダヤ人をみんなまとめて「箪笥の引き出しに詰め込んで」窒息させてやりたい、と書いた作家カフカには、明らかにそうしたユダヤ人の反ユダヤ主義が感じられる。ドイツのユダヤ人哲学者テーオドール・レッシング(一八七二〜一九三三年)はこの現象を「ユダヤ人の自己憎悪(Der jüdische Selbsthaß)」と
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