脳と心 ――クオリアをめぐる脳科学者と精神科医の対話 茂木健一郎 ・ 斎藤環 いま、脳にまつわる話をとりあげた本が、書店の棚に目立つ。 ゲーム脳や男女脳など、脳に関する言説が次々に生まれては消えていく。 それでも脳についての本は、あとを断たずに刊行されている。 なぜ、読者は、これほど脳に関心を示すのか。 それは、脳が誰の身体にも備わっており、重要な機能を担っている部分であるにもかかわらず、その機能の複雑さゆえに、くわしい実態がつかめないからであろう。 脳科学は日々、進化しており、さまざまなことが明らかになっている。 しかし、どれだけ最先端の技術を駆使しても、わからないことがある。それが、脳と心がどうつながっているのか、という問題だ。 茂木健一郎は、脳と心をつなげる橋のようなものとして、「クオリア」という概念を提起した。仮に、この「クオリア」がほんとうにそのような役目を持つのであれば、茂木の