たまたま古本屋で手にした高橋昌明『酒呑童子の誕生 もうひとつの日本文化』(中公新書、一九九三年九月三〇日三版)を読みはじめたところ、その第一章「酒呑童子の原像 京都と四角四堺祭」がまさにタイムリーな論述なのにビックリ。酒呑童子は疱瘡神のアレゴリーだったというのだ。
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銅牛樋口勇夫『漢字雑話』(郁文舎、吉岡宝文館、一九一四年八月一日四版)。題字は説文学の研究で知られた高田忠周だそうだ(雑が襍としてある)。 樋口勇夫(ひぐちたけお)は筑後久留米藩の漢学の家に生まれ、銅牛、得川、東涯などと号した。伯父に樋口和堂。鹿児島県立二中で教鞭を執った後、九州日報記者、さらに明治四十一年に東京朝日新聞社会部に入っている。中塚一碧楼とともに朝日俳壇の選者をつとめた。本書(初版は明治四十三)は朝日紙上に連載した同名の読物をまとめた著作のようである。大正元年退社後、早稲田大学、国学院大学、法政大学等で講師を勤めた。著書はざっと調べたところ以下のごとし。
山本善行撰『埴原一亟 古本小説集』(夏葉社、二〇一七年八月三〇日)読了。とにかく面白い(文字通り素直に面白い)小説集だった。 私小説のようにも読もうと思えば読めるが、小生の受けた感じでは私小説ではない。作者自身が古本屋をやっていたこともあり(昭和十一年、武蔵野線東長崎駅前通りに古本屋「一千社」開店)、屑屋の世界にも精通していたわけだが、それはあくまで熟知した素材であって、物語そのものはほぼフィクションではないだろうか。 本書のなかで完成度の高いのは「翌檜(あすなろう)」である。ハラハラさせられるのは「生活の出発」で、これは高利貸しの風俗記録としても意義ある作品かと思う。個人的には「かまきりの歌」を興味深く読んだ。一膳めし屋で顔をあわせる浪人中の中学生と初老の男性が仲良くなり、その謎めいた男性の過去が暴かれて行く……と、もうすこし具体的に紹介したいけれど、面白味が半減してしまってもいけないの
無印良品が書店を始めたのは二〇一五年だそうだ。知らなかった。近所の無印は本を置いてない(京都駅近くのイオンモールKYOTOにはあるらしい)。松岡正剛の編集工学研究所が企画や選書を手がけたというが、今回は文庫本を出版した。「MUJIBOOKS 人と物」シリーズ。1が柳宗悦、2が花森安治、3が小津安二郎。いずれも二〇一七年六月一日初版第一刷発行。編集デザインは櫛田理、広本旅人、佐伯亮介。編集工学研究所のスタッフである。体裁はタテ148mm、ヨコ105mm。カラー口絵八頁、ノンブルは157頁まで。これも三冊共通。既刊書からおいしい文章だけ抜き出して関連写真といっしょに並べただけという安直といえば安直、うまいといえばうまいやり方である。定価は税抜500円也。ちょいと欲しくなる。 ひろい読みしているが、やはりどこをとっても面白い。小津安二郎の文章はほとんど読んだことがない(映画は人並みには見ているも
《先日ご案内いたしました「花森安治装釘集成」につきまして。 色校正に手間がかかり、当初の予定より20日程度遅れて、今月25~26日頃出来となります。ご予約の方には、本ができ次第、今月末までにお送りいたします。今しばらくお待ちくださいませ。》
明治初期の文部省小学唱歌の多くがイギリスなどの民謡や俗謡だったりするのと同じで、教科書の挿絵も外国のスタイルをそのまま取り入れていたのだろうと思う。その原画を描いたり彫ったりしたのは浮世絵や草双紙の出版にたずさわっていた人々だったろうし、和風な風物も描くわけだから、稚拙ながらも、そこに何とも言えない味わいが出て来るということにもなる。こういう教科書カットを集成したらさぞ面白い本ができることだろうと思う(すでに存在していれば御教示を)。
本書は、筑摩書房の装幀に携わった幾多のデザイナー、編集者、社内デザイナーの仕事の紹介をとおして、魅力あふれる豊かな実りの系譜を展望しようと企図した。そのことで、わが国の出版文化史に類いない光芒を放つとともに、出版界のひとつの指標となっている同社の装幀が果たしている役割を多角度から浮き彫りにできれば、と思う。 筑摩刊行本の装幀は幾多の社外デザイナーがかかわったり、専門に近い社員もしくは専門スタッフを中心とする社内装幀であったりするが、一貫して独自の品格とクォリティをたたえている。いっときの流行を追わず、奇をてらうことのない節度ある手法に基づく端正なたたずまいは、多彩な交響にあってもおのずと格調高い《筑摩カラー》を形成しているといってよいだろう。 充実した社内専門スタッフと幾多の有能な社外デザイナーの登用。この両輪こそ筑摩カラーの源泉だろう。筑摩書房の装幀にかかわった中には、社員ではあったが吉
昨年後半ずっとそのレイアウトにかかりきりだったのが臼田捷治さんの新著『書影の森 筑摩書房の装幀1940-2014』(みずのわ出版)だ。先週ようやくのことでデータを印刷所に入れ、昨日その初校が届いた。上に乗っているのは束見本。B5判の角背ハードカバー。継ぎ表紙。ジャケットなし。オビを広めに掛けようかと思案中。本文はフルカラー212頁だから外装はごくシンプルに。 内容の概要は以下の通り。臼田氏のテクストおよび装幀家の発言、松田哲夫氏、加藤光太郎氏の証言なども随時挿入し、筑摩書房の装幀の流れ、ひいては出版活動の大概が実感できる構成になっている。個人的には付録の出版資料に力を入れた。ここでは岡崎氏および『sumus』晶文社特集でもお世話になった福島修氏にも再びご協力を賜った。
池谷信三郎他『ルル子』(平凡社、一九三〇年六月一五日)。昨日、兵庫県美の展示にこの本が第二部のいちばん最後に並んでいた。残念ながら、これは小生の本ではない。日本近代文学館でカラーコピーしてきたもの。展示本も同館所蔵本だったが、たしかこの本が二冊あって、小生が閲覧したこの本ではない、もう一冊のようだった。 一九三〇年六月に蝙蝠座が築地小劇場で第一回講演として上演したのが「ルル子」だった。すなわち中村正常、池谷信三郎、舟橋聖一、坪田勝、西村晋一の五人がルル子という女性を主人公にしてコントを書いて上演した。その舞台装置を担当したのが、東郷青児、阿部金剛、佐野繁次郎、古賀春江。その台本である。 どうしてわざわざこの本を閲覧したかというと、しばらく前に以下の原稿を入手したため、確認しておきたかったのである。 ただし今日出海の序文四枚と中村正常の「「馬鹿の標本」座談会」三十二枚が綴じられているだけで、
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