大学で日本の古典文学を研究するとはどういうことか、はっきりしたイメージを持っている高校生はそんなに多くはないでしょう。とはいえ、たとえば『源氏物語』の本文を研究するとか、『万葉集』の歌人について研究するとか、いくつかの具体例が浮かぶかもしれません。でも、文学研究というものは、実にいろいろなものを含んでいて、とても一口には言えません。ここでは、たぶん、あまり知られていない古典文学研究の一領域をご紹介してみましょう。 この本は、狂言に出てくる「又九郎左衛門」という人物の名前から始まります。著者はそれを、「またし」(またい)、つまり、正直とかマジメとかいうような意味を含んだ名前ではなかったかと考えます。今なら、「マジ男」君とでもいう名前でしょうか。 では、その名前にふさわしい人物は、どんな人なのか。著者はそのモデルを、昔話の世界に生きている正直じいさんに求めます。「舌切り雀」や「花咲かじじい」、