前田哲男著『戦略爆撃の思想』を読む 近代戦争の究極的な本質 過去の戦争が現在の戦争を用意し、 さらには未来の戦争を準備する 『図書新聞』2799号(06年11月25日) 一面 評者:纐纈厚(山口大学教授) 大作は、言うならば心砕ける思いを私にいつも与えてくれる。久しぶりに、そんな大作に触れる機会を得た。軍事ジャーナリストとして、徹底した現地取材ぶ りと、叙述の明快さで知られる前田哲男氏の『侵略爆撃の思想』だ。私は二〇年前から、この本の読者の一人である。暫くお会いしなかった前田氏が、およそ半 年もの間取材のため中国の重慶に滞在されていたことは、帰国後直接伺った記憶がある。この本は私にとっては、間違いなく歴史書だが、同書は狭い意味での歴 史書でない。軍事の名を関すれば軍事史、軍事技術史、軍事思想史など、その多面性は群を抜いている。最初から意図されたのか、あまりにも大きな歴史事実を