幸田露伴から安東次男まで、注釈鑑賞の本もかなり読んだが、知識は得ても、『古句を観る』のように、酔ったことはなかった。 酔った。といっても、いい気持ちになった、というだけではない。読んでいるうちに、著者の文章に同化して、読みおわったときには、成長したような気持、というと嫌味だけれども、自分が変わった感じがした。 宵曲氏の元禄俳句のえらびかた、鑑賞をたすけるための近代俳句、近代短歌、近代詩のえらびかた、そしてなによりも、文体が気に入ったのである。研究、考証、鑑賞でありながら、それ自体が芸術になっている。(原文は旧字新仮名) うえに掲げたのは『柴田宵曲文集4』の帯に書かれていた都筑道夫による推薦文。さすが本の紹介はお手の物というか、ツボをしっかり押さえた褒めっぷりで、だいたいこんな本であるし、そもそも青空文庫に収録されているので、さっさと本文読み始めてもらえば合う人はそのままつらつら読み続けるん