思いだせば、歴史の教科書って断定されたものの言い方をしていたものである。あたかも絶対的な歴史が存在するかのように思いこまされたものだ。 歴史にかぎらず学問というのは学者の間では「あーでもない」「こーでもない」と永遠に言い合っている井戸端会議みたいなものである。それが教科書になると、「絶対的な真実はこれだ」と決めつけられている。 そんな真理がどこにも存在していないと一般の人が気づいたときに学問や読書のたのしみははじまるのである。たぶん一般の人はいまでも教科書で習ったように絶対的な真実は偉い学者が知っているのだと思いこんでいることだろう。だから学問や読書はおこなわれないのである。 そういう思い込みを打ち壊すにはこの本は役に立つ。私もけっこう役に立った。 「史実は明らかにできるか」と「歴史学は社会の役に立つか」というふたつのテーマで考察されているのだが、哲学や構造主義の領域にまでふみこんで人間は