水泳のクロールで速く泳ごうとすればするほど、キック動作(バタ足)は前に進む力に貢献しにくくなる――。こんな研究結果を、筑波大と東京工業大の研究チームがまとめた。秒速1・3メートル(100メートルのタ…
by Chris Hau 氷上を滑り速さを競うスピードスケートなど、氷の上で行われるウインタースポーツは多いものです。しかし、意外なことに「なぜ氷の上で滑るのか?」というメカニズム自体はこれまで解明されていませんでした。ついに、マックスプランク・ポリマー研究所の研究者が古くからの謎を解明しています。 Molecular Insight into the Slipperiness of Ice - The Journal of Physical Chemistry Letters (ACS Publications) https://pubs.acs.org/doi/10.1021/acs.jpclett.8b01188 The slipperiness of ice explained -- ScienceDaily https://www.sciencedaily.com/release
人間の消化器系を示すイメージ図。左上に腎臓に似た形をした紫色の脾臓がある。2009年7月に発表された研究によると、マウスを対象に調査した結果、役立たずと思われていた脾臓は、実際には損傷を受けた心臓の回復に欠かせない役割を果たしていることがわかった。 Illustration by MedicalRF.com/Visuals Unlimited 人体には虫垂や扁桃腺(へんとうせん)、余った血流路など、痕跡器官と呼ばれる臓器が存在している。進化の名残ともいえるこのような器官は、あっても無くても人体にはそれほど影響がないと考えられてきた。しかし、医療研究技術の発達に伴い、痕跡器官にも実際には懸命に働いている臓器があることがわかってきた。 痕跡器官の好例が脾臓(ひぞう)である。最新の研究によると、損傷を受けた心臓の回復に欠かせない役割を果たしていることが判明したという。脾臓は腎臓に似た形で腹部の左
天野 彩 昨秋、子宮頸がんワクチンを接種した思春期の女の子に重篤な副作用が出やすいという指摘に「科学的な根拠がない」と反論して一躍話題を集めた、医師免許を持つジャーナリスト村中璃子さんの講演を聞きに行った。彼女は接種の副作用とされる症状は元々その年代の少女によく見られるとしてワクチンの接種停止決定を批判した。科学的なデータに基づかない主張には逐一反論してくださいと聴衆の医師らに呼びかけ、講演を終えた。 主張には筋が通っていたが、「科学的に正しい」ことを重視しすぎると、科学の範疇ではない問題を軽視することになりかねないと不安になった。「科学的な根拠がない」とは「今の科学には結論を出すことができない」という意味であり、「正しい」か「正しくない」かを科学には判断することはできず、その材料を与えるに過ぎない。科学的な根拠のない主張を認めないことは、絶対的ではないはずの暫定的な科学の見方を絶対視する
ニューヨーク市で遠赤外線サウナを楽しむ女性。遠赤外線サウナには様々な健康効果があるが、汗で毒素を排出できるといううたい文句は科学的に証明されていない。(PHOTOGRAPH BY LAUREL GOLIO, REDUX) 発汗は、今や健康や美容のトレンドになっている。遠赤外線サウナからホットヨガまで、タオルが汗でびっしょりになるアクティビティはリラクゼーション効果があるだけでなく、体の毒素を排出して健康を保つとも言われている。 だが、汗をかいて毒素を排出するという説は、汗をかいて弾丸を搾り出すというのと同じくらいありえない話であることが、最新の研究で明らかになった。科学者たちも長年密かに疑っていたことだが、汗と一緒に毒素も排出されるというのは、都市伝説に過ぎなかった。 人間が汗をかくのは体温を下げるためであって、老廃物や有毒物質を排出するためではない。その役目を負うのは、腎臓と肝臓である。
(CNN) 米ニューヨーク大学などの研究チームが、体内の「間質」と呼ばれる空間の構造と分布に関する詳細を研究し、「人体の新しい器官を発見した」として、27日の学術誌に論文を発表した。人体で最大の器官かもしれないとの見方も示しているが、この説に対して異論を唱える専門家もいる。 間質は、全身の組織と組織の間の液体で満たされた空間をさす。間質組織や間質液については従来から知られていたが、今回の研究では、これまで認識されていなかった人体の機能が解明されたとして、間質を「器官」と呼ぶことを提唱した。 「当初我々は、これを単なる間質組織と考えていた。だが器官とは何かという定義に踏み込むと、器官とは単一構造または単一構造をもつ組織、あるいは単一機能をもつ組織だという考え方に突き当たる」。ニューヨーク大学のニール・シース教授はそう解説し、間質はその両方に当てはまると指摘した。 「この構造はどこを見ても同じ
サメ肌の構造が、飛行機、風力タービン、ドローン、自動車の性能を向上させる可能性がある。(IMAGE BY JAMES WEAVER, HAVARD UNIVERSITY) サメは、4億年以上にわたる進化を経て、水中を高速で泳げるように適応してきた。なかでもアオザメは最も速く、短距離なら最高時速100kmにもなる。2位はネズミザメで時速80km、有名なホホジロザメは3位だ。(参考記事:「海のハンター ホホジロザメ 有名だけど、謎だらけ」) サメの皮膚は楯鱗(じゅんりん)と呼ばれる小さな歯のようなウロコに覆われている。1980年代にこの構造が見つかって以来、空気力学的な研究が行われてきたが、水の抵抗(抗力)を減らす効果について研究者の意見は分かれていた。そこで今回、米ハーバード大学の進化生物学者と工学者のチームが詳細な研究を行った。 学術誌『Journal of the Royal Socie
<あなたのまわりのサイエンス> 「なぜスパゲティは2本でなく 3本に折れるのか」を解く 今回は、手軽に料理することのできる、あの細長い食材についてです。折れ方に、意外と深い物理がかかわっているというのです。 (Z会小学生コース保護者向け情報誌『zigzag time 4・5・6年生』2014年7月号) 【2015年1月17日】 20世紀後半のこと。世界的に有名な物理学の研究者が、知人と一緒に家の台所で、ある疑問を論じあっていました。「なぜ、スパゲティの乾麺は、3本に折れるのだろうか」。 この物理学者は、米国出身のリチャード・P・ファインマン(1918―1988)。彼は、量子電磁力学という物理学の難解な理論で業績を上げ、1965年に日本の朝永振一郎らとともにノーベル物理学賞を受賞した人物です。“天才肌”の研究者としても知られています。 難解な理論を次々解いていったファインマンも、この「スパゲ
収穫され出荷を待つオレンジ(2010年1月6日撮影、資料写真)。(c)AFP PHOTO / GETTY IMAGES NORTH AMERICA / matt stroshane 【2月8日 AFP】オレンジ、グレープフルーツ、レモン、ライムなどはすべて、かんきつ類の「野生種」10種の組み合わせからなる交雑種であるとする研究論文が7日、発表された。この10種は約800万年前にアジアの単一の共通祖先から分岐したという。 米エネルギー省共同ゲノム研究所(Joint Genome Institute)などの国際研究チームは今回、世界的に好まれているこの果物類のルーツにさかのぼる系統樹を作成するために、かんきつ類60種のゲノム(全遺伝情報)を解析した。 論文の共同執筆者で、共同ゲノム研究所のグオホン・ウー(Guohong Wu)氏はAFPの取材に、全かんきつ類の根源をたどると、後期中新世のヒマラ
by Rhett Wesley 「脳は体を支配している」という考え方は長い間支配的でしたが、近年になって胃腸が「第2の脳」と呼ばれるなど、人間の体は脳だけによって動かされているのではないことがわかってきています。脳神経科学者のアントニオ・ダマシオ氏も「脳は体を支配するのではなく、調整している」という考えを持っている一人であり、「脳の偉大さ」を誇張する風潮とは異なる考えを示しています。 The Evolution of Pleasure and Pain http://nautil.us/issue/56/perspective/antonio-damasio-tells-us-why-pain-is-necessary ダマシオ氏は「情動」の研究者として世界で名をはせている人物。現代では、「脳は体においてコンピューターのように作用し、支配的な位置で体の他の部分に指令を送っている」という考え
約46億年前にできた地球に初めての生物が誕生したのは、今から40億年ほど昔だと考えられている。バクテリアのような生物だったらしい。それが連綿と現在の生き物たちにつながっているのだが、その途中で、多いときには生き物全体の9割もが絶滅するような「大量絶滅」がおきている。 大量絶滅は過去に5回あったとされている。もっとも有名なのはその5回目、恐竜がすべて滅んだ約6500万年前の大量絶滅だろう。現在のメキシコ沖に落ちた直径10キロメートル以上とされる巨大な隕石(いんせき)が、その原因らしい。このほか、地球史上最大といわれる3回目の大量絶滅は約2億5000万年前におき、そのあと始まった「三畳紀」と「ジュラ紀」の境目にあたる約2億年前にも、4回目がおきた。 特定の希少種が姿を消していくのとは違い、大量絶滅では、地球上の大半の種が短い期間に滅んだ。なぜ、こんなにも多くの生物が一度に滅んだのか。もちろん、
ジョージ・M・サットン鳥類研究センターのクマネズミ(Rattus rattus)。(PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE, NATIONAL GEOGRAPHIC PHOTO ARK) 中世の欧州やアジアで大流行し、多くの人々の命を奪ったペスト。その原因であるペスト菌は、ネズミによって拡散されたと長い間信じられてきた。だが、犯人は別にいたようだという結果が最新の研究で示され、論争を呼びそうだ。 論文は1月15日付けの科学誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。それによると、欧州の人口の3分の1が死亡した「黒死病」と呼ばれる14世紀のペストの大流行を含め、14世紀から19世紀初頭まで続いた世界的流行では、主にヒトに寄生するノミとシラミが細菌を媒介していたと示唆されている。 「疫病は、人類の歴史を大きく変えてきました。ですから、どうやって拡大したのか、なぜあれほど
前からよく聞く「長年海苔ばっか食ってきたせいで、日本人の腸だけに海藻を消化できる酵素をもつ菌がいる」という話がうさんくせーなと思っていたので、ちょっと調べてたみたら案の定 これガセビアじゃねぇかぁー! ってなったので話をまとめておく。 ×日本人だけが消化出来る ○日本人の一部からは発見されている ◎そもそもサンプル人数が少ないので「日本人はたまに持ってる」と判るが、ほかの地域/国がどうなってるのかは分からない 日本人「だけ」というならば世界中のあちこちから幅広くサンプルを集めて検証しなければならないが、話の出所になったと思われる論文では、そんな検証は成されていない。実際に検証されてるのは日本人と北米人だけ。そしてそもそも、元になった調査は海草を分解できる腸内細菌の機能がどこから来たのかという考察と、異なる文化間での腸内細菌の種類の違いについてが主題となっている。 日本人の腸の中でしばしばみ
【11月3日 AFP】マンモスの化石にはなぜ雄が多いのか?この謎を解明したとする研究論文が2日、米科学誌カレント・バイオロジー(Current Biology)に発表された。 現代の野生ゾウと同様に、氷河時代のマンモスの若い雄も単独で行動する傾向があり、雄は雌に比べて川に落ちたり、氷を踏み抜いて落下したり、沼地や陥没穴にはまったりなどの危険な状況に陥るケースが多かった可能性が高いと、研究チームは主張している。このような場所で絶命した個体の骨は数千年もの間保存されるのだという。 一方で、群れで行動していた雌の場合、群れを率いる年長の雌のリーダーが地形を熟知しており、仲間の雌たちを危険から遠ざけていた。 論文の共同執筆者で、スウェーデン自然史博物館(Swedish Museum of Natural History)のロベ・ダレン(Love Dalen)氏は「経験豊かな雌が率いる群れで生活する
By fitzsean 宇宙に存在するあらゆる物質(マター)には、電気的に正反対の性質を持つ反物質(アンチマター)が存在しています。この2つは衝突すると高いエネルギーを発して共に消え去る関係にあるのですが、こうして宇宙が存在できているからには、反物質のほうが少なかった、あるいは少なくなるだけの理由があったはず。そんな謎を突き止めるためにCERN(欧州原子核研究機構)は反物質の性質を調査したのですが、「やはり宇宙に物質は存在しないはず」と言わざるを得ない結果が出ています。 A parts-per-billion measurement of the antiproton magnetic moment : Nature : Nature Research https://www.nature.com/nature/journal/v550/n7676/full/nature24048.htm
哺乳類の細胞が、酸素だけでなく、食物に含まれる硫黄を使った呼吸(硫黄呼吸)をしていることが分かったと、赤池孝章・東北大教授(生化学・微生物学)らの研究グループが27日付の英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表した。硫黄呼吸は原始的な細菌だけが行っており、進化の過程で失われたと考えられてきたが、ヒトなどでも生命維持に不可欠だという。 細胞レベルでは、呼吸はエネルギーを作り出す活動を指す。生物は細胞内にあるミトコンドリアで、主にブドウ糖と酸素からエネルギーを作って利用している。研究グループはヒトやマウスのミトコンドリアを詳しく調べ、アミノ酸の一種のシステインと硫黄が酵素の働きによって結びついて活性化し、エネルギーを生み出していることを見つけた。硫黄呼吸をできなくしたマウスの寿命は約10日しかなかった。
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