安倍首相は、「侵略戦争」を認めた1995年の村山首相談話や「慰安婦」について謝罪した93年の河野官房長官談話を認めるなど軌道修正が目立ち、「自虐史観」を批判する支持者から批判を浴びている。他方、下村官房副長官が河野談話について「事実関係を研究し、客観的に科学的な知識を収集して考えるべきではないか」とのべたことが野党の反発を呼んでいる。しかし、これは靖国参拝のような「心の問題」でなはく、検証可能な歴史的事実の問題であり、政治的配慮で封印するのはおかしい。 私は、かつて慰安婦騒ぎがつくられた現場に立ち会ったことがある。1991年にNHKの終戦関連企画で、私は強制連行をテーマに、同僚は慰安婦をテーマに取材した。韓国で数十人の強制連行経験者に取材したが、軍が連行したという証言は得られなかった。強制連行とよばれるものの実態は、朝鮮半島で食い詰めた人々が高給にだまされて日本の炭鉱や軍需工場に出稼ぎに