「このドキュメントだけではあなたの入国は認められません。追加審査が必要ですからこの用紙を持って列の後ろで呼ばれるまでじっと待っているように。」 入国審査官の威厳を物質的に象徴するかのように屈強に造られたイミグレーションカウンター。その目の前に並べられた薄っぺらのベンチに座らされている老若男女。手にはみな「要追加審査」と書かれた半紙を持たされて無言。一様にうなだれている。ここは英国出入国管理局(UK Border Agency:以下UKBA)の権力の砦、ロンドン・ヒースロー国際空港の入国審査場である。何人たりとも、厳格な審査官が「良し」としない者について、女王陛下の国への進入は認められない。「下馬」ならばいざ知らず、ただ「降機」したくらいでは到底参内などまかりならない。ダグラス・マッカーサーもびっくりである。 英国においては、英国に居住権(right of abode)を有する人々(英国市民