羽生善治の出現は将棋界にとって一滴の血も流れない何の音も聞こえてこない、しかしそれは確実な革命であった。将棋界には羽生以前、羽生以後といっていいくらいの大きな変革がもたらされた。将棋界の勢力図が一変したばかりではない、それまでの棋士たちの価値観は瓦解し、将棋への考え方からライフスタイルに至るまで、羽生を旗頭とする天才集団に席捲されていったといっていいかもしれない。 奨励会入会年度から昭和57年組と呼ばれる羽生世代(羽生は昭和45年生まれ)は、羽生以外にも佐藤康光、森内俊之、郷田真隆らのタイトル経験者やトップ棋士を輩出している。現在のタイトルを保持しているのは五冠の羽生をはじめ、藤井猛竜王、丸山忠久名人とすべて羽生以降の世代である。 小学6年生6級で棋士の養成機関である奨励会に入会した羽生は、10年で卒業すればいい方で15年以上かかる者もざらにいる奨励会をわずか3年でクリアし、15歳で四段昇