「これ全部、彼女から届いたものなんです」と見せて頂いた封筒の束に驚愕した。表面には、幾重にも重なったセロハンテープが貼り付けられている。もっとも厚い部分で、5センチはあるだろうか。封筒自体が膨らんでいるのは、中にも作者が加工した封筒や折り紙などが詰め込まれているためだ。よく見ると、セロハンテープの塊の中には玩具やシール等が埋め込まれているものもある。 じつは、こうした封筒の束は、大切な誰かに向けて送られた作者からの「手紙」なのだ。作者の母親に伺うと、YouTubeを見ながら自宅で行っている彼女の儀式的行為で、数時間でひとつの塊をつくってしまうため、家では多量にセロハンテープをストックしているのだという。興味深いのは、この作品とも言えない「何か」に価値を感じ、こうして大切に保管しておく他者がいるということだ。言い換えると、それは誰かに想いを馳せるということなのだろう。メール・アートなんて言葉
