東方基督教の一派で、中国で『景教』と呼ばれた宗教がある。 景教についての資料をインターネット上で検索していて、面白い本があることを知った。 『モンゴル帝国とキリスト教』(江上波夫著、サンパウロ)だ。 その題名だけでは、恐らく、それほどまでに興味をもたなかっただろう。 だが、その著者の名前が「江上波夫」とあるのに目が止まった。 いうまでもなく、『騎馬民族征服王朝説』を唱えた歴史学者だ。 日本古代の大和王朝は、夫余や高句麗と関係ある北東アジア系の騎馬民族が朝鮮半島を経由して日本に渡来して国家を建設したという説だ。 この説は発表当時は大きな批判を浴びたが、現在でも学界で定着したとはいえない。 だが、たんなる奇説として棚上げされることなく、また一部の人々から熱烈な支持を得ていることもたしかだ。 江上氏は2002年11月11日、惜しくもこの世を去られたが、その経歴は堂々たるものだ。