あらすじ 空襲と食糧難に疲れた主人公は都庁を退職し北海道開拓団へ参加することを決意する。終戦の前日、妻子を連れて東京を発ち、大雪山麓へ入植するが、応募条件とは全く違う過酷な現実が待ち受けている。一家は運命に翻弄されながらも、懸命に未開地を切り拓いて生きていく。 打ち捨てられた開拓民の悲哀 北国諒星・一道塾塾生 作家開高健は、1959(昭和34)年頃から翌年にかけて、大雪山の麓にある開拓村へ季節ごとに取材に行き長期間滞在した。付近には戦後、東京、大阪などからかなりの入植者が入ったが、この取材のとき開高は村の生活の厳しさに度肝をぬかれたという。 こうした苦労の末、1960(昭和35)年12月、小説『ロビンソンの末裔』(角川文庫)を発表した。 敗戦前日の1945(昭和20)年8月14日、空襲と食糧難に疲れた「私」は東京都庁をやめ、妻子を連れて北海道開拓団の一員として上野駅を発つ。汽車には様々な職