【千葉・「怪奇」伝承の地を歩く】(2) 千葉県銚子市で最も古い漁村、外川(とかわ)の町に、「外川三昧(さんめ)」と呼ばれる共同墓地がある。 海が一望できる台地にある墓地までは、漁港から急な坂を上っていかなければならない。真夏の日差しをあびて汗だくになり、息を切らせながらようやくたどり着いた墓地には、歩くすき間がないほど墓石がびっしりと並んでいた。 そのほぼ中央に、ひときわ古そうな石碑が建っている。碑には「南無阿弥陀仏」の文字。この石碑は、漁師仲間に殺された恨みから、海の化け物「海んば」となって、漁村に災いをもたらした女性「おさつ」の霊を鎮めるための供養塔だと伝えられる。 銚子市教育委員会がまとめた「銚子の民話」に「海んばおさつ」という話がある。山の妖怪「山んば」は各地の昔話や伝説に登場するが、「海んば」は海に囲まれた千葉ならではの話だ。 この本によると、今から200年ほど昔の江戸