電気自動車(EV)の普及に向けての動きが加速する中で、EV性能を大きく左右する高性能のバッテリー開発に熱い視線が注がれている。現在は液体の有機電解液が使われているリチウムイオン電池が主流だが、これに代わる新しいEV用バッテリーとして国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が2007年から同じリチウムイオン電池ではあるが、液体ではなく固体の無機電解質を使った全固体電池の開発を進めている。開発の現状と課題について、次世代電池・水素部蓄電技術開発室の田所康樹主任研究員に聞いた。 ――NEDOが全固体電池を開発することになったきっかけは何か。 田所主任研究員 全固体電池のブームのきっかけの一つとして、2011年に東京工業大学の菅野了次教授が、液体のリチウムイオン電池に用いられている電解液のイオン伝導度より高性能な難燃性の固体電解質を見つけて科学雑誌「Nature(ネイチャー)