鄭鴻生(丸川哲史訳)『台湾68年世代、戒厳令下の青春――釣魚台運動から学園闘争、台湾民主化の原点へ』(作品社、2014年) まだ早熟な高校生であった1968年、同人雑誌を通じて新しい思潮に接し、社会的意識に眼を開かされたた著者と仲間たち。彼らの情熱は大学進学で移り住んだ台北でより具体的な熱気を帯びることになる。もともと在米華僑学生を中心に始まった保衛釣魚台運動(保釣運動)は1971年春に台湾大学へも飛び火し、これが大きな触媒となって言論の自由や民主化を求める学園紛争が各大学で一挙に盛り上がった。 日本で安保闘争が、アメリカでベトナム反戦運動が社会現象となっていた時期とほぼ重なる。台湾南部から政治首都・台北へ出てきた田舎学生の都会的スノビズムに対する反感とコンプレックス。ビートルズやフォークソングを口ずさみ、鬱屈を晴らすように酒を呑む一方、知的に背伸びしようと仲間たちと語らう日々を回想する語