『ルポ 川崎』などの著書を持つライターの磯部涼が、毎月「音楽のなる(鳴る、生る、成る)場所」を取材し、思考する新連載がスタート。 第1回は、2020年4月、ある地方都市で見た「サウンドシステムからサブベースが鳴り響き、若者たちが揉みくちゃになる」光景から始まる。 ジェネレーションZと呼ばれる若い世代のリアル、「うちで踊ろう」のメッセージ、そしてコロナ禍の日本に生まれた希望のアンセム。 コロナ禍における文化の変化は、次第にその基盤を揺るがしていった 男たちの手から手へと葉巻が渡り、部屋が香ばしい匂いで満たされていく。筆者はヴォイスレコーダーを構えたまま、話し始めるタイミングを伺っていた。いわゆるアウトロー取材では珍しくない光景だ。ただ少し前までと違うのは、今がコロナ禍だということである。吐き出される煙を見つめながら、この部屋にもSARS-CoV-2は浮遊しているのだろうかと考える。やがて葉巻