アニメ考察「日常」で描かれている日常は、我々の現実で体験したことのある日常的体験をベースにしているのではなく、アニメまんが的日常が描かれている。お魚くわえたドラ猫を追いかけるという、かつては存在したかもしれないが、現在ではすでに見られなくなった風景が描かれている。このリアリティはアニメまんがによって延命されたかつて共有されていた日常であるのだが、押井によればこの表現(記号的表現)はアニメというジャンルの脆弱性を表すものであり脱却するべきものである。押井は1986年に制作した「天使のたまご(以下、てんたま)」以降、現実の風景や所作を追及したリアリティ表現を行っている。たとえば、「てんたま」以降に「パトレイバー」、「攻殻機動隊」といった作品を発表しているが、それぞれの作品にはアニメではなく、現実を延長した世界観が見いだせる。たとえば、「パトレイバー」では東京という都市(現実)での戦争(虚構)を