阿部和重(作家) 阿部和重、タイで自作を語る【前半】から続く タイの書店に並ぶタイ語訳された阿部和重氏の本 『インディヴィジュアル・プロジェクション』『ニッポニアニッポン』タイ語版について ――初めていらっしゃったということですけど、タイはいかがですか? 阿部:バンコクは着いて2、30分くらいで好きになりました。まだ表面上でしか味わっていないのですけれども、この雰囲気がすごく自分に合っている。どこにいるか分からない感じと、無方向的であり無時間的である感じが、とてもいいですね。 ――どこにいるか分からないというのは、自分が立っている場所が分からなくなるという意味ですか。それとも、いろんなものがありすぎて分からなくなるというニュアンスですか? 阿部:つまり、これまで僕がとらえてきたある種の都市のイメージというもの、この国のこの地域のこういう街というものは、行く前からある程度のイメージがありまし