2010年10月17日06:06 カテゴリ書評 田中森一『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』 その2。 割り屋という言葉を、私はこの本で初めて知りました。田中森一の『反転 闇社会の守護神と呼ばれて』。以前はバブル紳士たちの実態をリアルに伝える本として紹介しましたが、いまは元特捜検事による具体的かつ信憑性にとむ証言としてお勧めしたい一冊です。 反転―闇社会の守護神と呼ばれて (幻冬舎アウトロー文庫) 著者:田中 森一 幻冬舎(2008-06) おすすめ度: 販売元:Amazon.co.jp クチコミを見る 東京と大阪の検察の違いは、こんな風に描かれています。 大事件を手がける意味からすると、東京地検にいたほうが圧倒的にチャンスが多い。大阪には、中央官庁も国会もない。いきおい、事件が小ぶりになりがちなのは否めない。そのため大阪の特捜部時代には、まず中央官庁の出先機関の汚職をつかもうとしていた。
〈……少なくとも死刑を合法の制度として残すこの日本に暮らす多くの人は、視界の端にこの死刑を認めながら、(存置か廃止かはともかくとして)目を逸らし続けている。 ならば僕は直視を試みる。できることなら触れてみる。さらに揺り動かす。余計なお世話と思われるかもしれないけれど〉(『死刑』より) 「ゲシュタルト崩壊って、わかりますか?」と森さんは尋ねてきた。漢字をじっと見つめていると、字がゆらゆらと崩壊していく。死刑について考えていると、そんな思いを何度となく繰り返してきたという。 僕はこの本で、「死刑を凝視せよ」みたいなことを言ってはいるんだけど、いざ凝視していると何がなんだかわからなくなる。やってみて、とてもやっかいなテーマだと思いましたね。 これはオウムの事件以降、ずっと考えていることでもあるんだけど、日本人の特殊性って何なんだろうか。世界が死刑廃止の趨勢にあるなかで圧倒的な死刑存置を支持するこ
あなたは「死刑」制度に、賛成ですか? 反対ですか? そんな質問を受けて、すぐにあなたは答えられるだろうか? あるいは、どれだけの時間、あなたは答えに躊躇するだろう。 まず、この数字を見てほしい。現在、あらゆる犯罪に対して死刑を廃止している国は、92カ国。通常の犯罪に対してのみ死刑を廃止している国は、10カ国。事実上の死刑廃止国(10年以上執行を停止している国)は、33カ国。これらを足し合わせた135カ国に対して、死刑存置国は、62カ国(2008年2月20日現在)。 世界の趨勢は死刑廃止に向かうなか、日本では必要と答える人が世論調査では8割を超える。存置であれ、廃止であれ、わたしたちは「死刑」がいったいどういうものか、ほんとうに知っているのだろうか。 若いオウム信者たちに密着したドキュメンタリー映画『A』『A2』をはじめ、放送禁止歌、超能力に下山事件。ときにタブーとされるアンダーグランドな世
死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う 作者: 森達也出版社/メーカー: 朝日出版社発売日: 2008/01/10メディア: 単行本購入: 12人 クリック: 399回この商品を含むブログ (188件) を見る 少なくとも死刑を合法の制度として残すこの日本に暮らす多くの人は、視界の端にこの死刑を認めながら、(存置か廃止かはともかくとして)目を逸らし続けている。 ならば僕は直視を試みる。できることなら触れてみる。さらに揺り動かす。 余計なお世話と思われるかもしれないけれど、でも実際に人が死ぬ。誰かが誰かを殺す。誰かが誰かに殺される。そんな事態に対して不感症でありたくない。 だからできるかぎりは直視して、そのうえで考えたい。死刑は不要なのか、あるいは必要なのか。人が人を殺すことの意味は何なのか。罪と罰、そして償いとは何なのか。 p012 この本を書きはじめる前、存置か廃止かでいえ
現場職員の見方や傷付き方 教誨師 1971年の処刑 廃止派から存置派へ 光市事件遺族からの手紙 前日のつづき。 死刑 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う 作者: 森達也 出版社/メーカー: 朝日出版社 発売日: 2008/01/10 メディア: 単行本 購入: 12人 クリック: 399回 この商品を含むブログ (186件) を見る 現場職員の見方や傷付き方 死刑執行が評価ポンイトとなる所長等幹部と現場職員では見方や傷付き方がちがう 「刑務官に課せられる仕事は、いつ執行命令が来ても執行できるようにしておくことです。要するに自殺させないこと、病気にさせないこと、狂わせないこと。だから毎日死刑囚たちと顔を突き合わせて、……寝顔だって見ますから。当たり前だけど、執行の指令をする幹部たちとは意識が違います。ほとんどの死刑囚は最初は気持ちが荒んでいますから、時には慰めたり、叱りもするし、
森達也の新刊「死刑」を読んだ。一気に読んだ。 これはいつもの「森達也業」ともいうべき仕事だなと思ったのが第一印象。しかしやっぱり森達也以外に書けない内容だとも思った。彼の代表作になるだろう。 世の中には曖昧な領域がある。それは誰もが忌避したくなる世界だ。手を突っ込んだところで余計な火傷を負うだけでまったく得にならない。どう書こうが誹謗中傷、ないしは「非国民」とか「レイシスト」とかありがたくないレッテルまで貼られることもある。さらに世の中は何事も竹を割ったようなわかりやすい善悪、左右、縦横な話を好むので、曖昧な領域なるところを追っても銭にはならない。そして誰もが取り上げるのを諦め、その世界はサンクチュアリと化してときには暴走していく。 森達也はそこへ果敢に攻め込んだ男である。先日も取り上げた動物実験。超自然現象。放送禁止歌。オウム真理教。メディアそのもの。 そして死刑。廃止派でありながらも、
2008年01月18日05:00 カテゴリ書評/画評/品評Taxpayer 人は人を殺せる。でも人は、人を救いたいとも思う - 書評 - 死刑 朝日出版社鈴木様経由で著者より献本御礼。 死刑 森達也 もしあなたが、民という名の主であるのであれば必ず目を通す、いや著者の見聞きしてきたものを本書を通じて追体験しておくべきだという一冊。 本書「死刑」は、死刑囚によって殺された被害者の遺族でもなく、死刑囚を逮捕した警察官でもなく、死刑囚を起訴した検察でもなく、その死刑囚を弁護した弁護士でもなく、その死刑囚に死刑判決を下した裁判官でもなく、その死刑囚を看取った看守でもなく、もちろん死刑囚でもない、死刑に際しては一部外者である著者が、3年間かけて死刑の当事者たちを訪れ、その言葉を集め、悩んで考えた「ロードムービー」。 目次 プロローグ 第一章 迷宮への入口 第二章 隠される理由 第三章 軋むシステム
http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20070628#1183007884 でもコメントした上記の本を読み終えました。410ページあり、中身にもなかなか濃いものがありましたが、夢中で一気に読んだ、という感じでした。この種の本で、私が今まで読んだ中では、3本の指に入るおもしろさでした。 おもしろかった点、興味深かった点を整理すると、全体として、率直、赤裸々な語り口で(ややオーバーな点なども散見されますが)、 1 今まで、田中氏について断片的に語られてきた点が、本人によってまとめて説明されていて、その中で、故・宅見組長や許永中などの人々との関係も明らかにされていること 2 バブル期及びその後の崩壊期の実態や、数々の経済事件について、田中氏なりの体験談や見方が披瀝されていて、非常に参考になること 3 「事件」に対する独特の見方、取り組み方や、関西検察(特に特捜部)の考え方、
『反転―闇社会の守護神と呼ばれて』はライブドア事件が国策調査という言葉を普及させたが,そもそも検察,特に特捜部の捜査とは国策調査なのだ,ということを納得させてくれる本書.石橋産業事件で有罪判決を受けた敏腕ヤメ検弁護士が記した. 日本を法治国家だと信じているナイーヴな方にお勧め.バブル期の様々な疑獄事件の裏事情について本書が正確に記述しているかどうかはさておき,本書を読むと検事やヤメ検弁護士の心象風景や職業倫理がどのようなものかであるとか,彼の目に映ったバブルとは何であるかが活写されている. 本書を読むと新聞の社会面で鉢合わせしたときは胡散臭いと感じた往年のバブル紳士たちが,人間的に魅力的な企業家であったのではないか,という気がしてくる.恐らく世の中には様々な物事の見方があって,世に通すそれは数ある中で通りのいい,或いは誰かしら勝者にとって都合のいい見立てであるのかも知れない. とはいえ刑事
1972年に起こった外務省機密漏洩事件についてのルポルタージュ。初版は1978年で、絶版になっていたが、今年、文庫として復刊された。そのきっかけはおそらく、外務省の元アメリカ局長が密約の存在を認めたことだろう。この事件で有罪判決を受け、毎日新聞を辞職した西山太吉氏は「外務省高官などの偽証によって名誉を傷つけられた」として、国家賠償訴訟を起こした。 事件は、最初は沖縄返還にからむ密約を社会党が国会で追及したことに始まる。ところが、そのうち情報源が外務審議官の秘書であることが判明し、西山記者が、それを入手しようとして、秘書と「情を通じて」国家機密の漏洩をそそのかしたとして国家公務員法違反で逮捕され、事件は男女問題のからんだ奇怪な展開になる。結局、最高裁まで争われた結果、被告側が全面的に敗訴した。 この事件は、過去の話ではない。当時追及された土地の原状回復補償費400万ドルだけではなく、核兵
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