「わかりませんか。僕ですよ。久しぶりですね先輩」 かつてのクラスメートの男子は、ある夏、妖艶な女となって、突然、島に帰ってきた。 男たちに苦悩を呼び起こし、欲望にもだえさせるために。 瀬戸内海のある島に一人暮らしをしている水無月陸は、地域振興の一環として島巡りのガイドシステムを開発している。あるとき、港から続く道で、女性と見まがう男と出会う。彼の名は黒坂聖(せい)。かつてのクラスメートだった……その瞬間から陸の中に、苦い過去の記憶がよみがえり、淫靡な欲望が芽生え始める。(「水のかげふみ」)。 同僚と訪れた秘密クラブでは、毎週金曜日に過激なSMショーが繰り広げられていた。男はその異常な空間の中で、ある女に似た美しい男「S」にのめり込んでいく……(「サロメは金曜日」)ほか、一人の美しい男を巡る、淫靡で狂おしい葛藤劇。奇才・海猫沢めろんが描く、限りなく透明でj純粋な欲望の行く着く先。そこは楽園か