小学生の頃、人里に熊が現れるのは、人が山を切り開いていったからだ、と習った。本当だろうか、と私は思ったが、いまだに事実をきちんと調べてみたことがない。 私が首を傾げたのは、「まんが日本昔ばなし」などを見て育ったためだろう。そこでは、昔の人はみんな山の中か海辺のどちらかに暮らしていたかのような描写になっていた。 現実には、農業に適した平野や台地に人口が集中していたそうだ。アニメの山は、平野の中にも数多ある丘陵などを誇張して表現していたものらしい。とはいえ、見渡す限りの平らな水田は、土木技術が普及し干拓や灌漑整備が進むまでは、限られた場所にしかなかったという。 古い街には大地の凹凸がよく残されている。いま私は東京に暮らしているが、関東平野の河口付近につくられたこの街の、坂の多さには閉口させられている。 実家は千葉の北総台地にある。近所を流れるふだんの川幅が1m程度しかない小川が、高低差10m、