再検証は研究者の縁から始まった 1935年3月8日未明に渋谷駅の南側で発見されたハチ公の遺体は、駒場にあった東京帝大農学部の病理細菌学教室(現・獣医病理学研究室)に運ばれ、当日午後に病理解剖されました。死因は慢性犬糸状虫(犬フィラリア)症。いまでは非常に少なくなりましたが、当時はかなり多くの犬がこの寄生虫の感染症で死んでいました。 遺体は国立科学博物館で剥製となり、解剖で採取した臓器(肺、心臓、食道、肝臓、脾臓)はホルマリン固定標本として獣医病理学研究室に保管されました。2006年からは農学資料館で上野博士の胸像とともに展示されてきましたが、2010年に新しい展開がもたらされます。きっかけは学内の研究者が遺伝子を調べたいと願い出たこと。連絡を受けたのは、獣医病理学研究室で准教授を務めていた内田和幸先生でした。 「宮崎大学時代の教え子の渡邊学先生(新領域創成科学研究科)が、イヌゲノム研究の一