教育について語りたがる人は多い。平等な学校教育を誰もが享受する日本は、チャンスが均等で他の先進国より格差が少ないと誇る右派。対して、近年の政府の新自由主義政策により格差が拡大し「子供の貧困」が急増したと怒る左派。しかし本書によると、いずれも事実に即さない印象論という点では同じである。 「教育格差も子供の貧困も最近始まったわけではなく、戦後ずっと放置されてきた問題。これはデータから明らかなわけで、今後は事実をベースに議論しよう、というのが趣旨です」 戦後日本は、生まれによる教育格差が常に再生産される「緩やかな身分社会」であり続けており、かつその格差の状況は今世紀に入ってからも現在まで大きく変わっていない。米国帰りの気鋭の教育社会学者が、乏しい日本の社会調査の中から苦心して集めたデータを基に、国際的に見て特にひどいわけではないが公平性も高くない「凡庸な教育格差社会」である日本の姿を描き出してい