愛知の代表的な豆みそ「八丁味噌(みそ)」の歴史ある生産者が、地域ブランドを国が守る枠組みから外れる異例の事態となっている。意に反する結果となった「まるや八丁味噌」(同県岡崎市八帖町)の浅井信太郎社長は「伝統とは違う製法を認めれば、本来の八丁味噌が守られなくなる」と憤る。国は国際的な名称保護を理由に挙げるが、生産者の不信は根深い。 菌の歴史 八帖町を走る旧東海道近くの駐車場に大型バスが止まると、観光客が次々とみそ蔵へ案内された。まるやと、向かいで「カクキュー」ブランドを展開する「八丁味噌」は、名前の由来となったこの地で江戸時代からみそ造りを続けてきた。 蔵には高さ1.8メートルの木おけが並び、古いものは約170年前から使う年代物だ。「おけや蔵に長年付いている目に見えない菌が風味に影響するんです」。まるやの浅井社長は誇らしげに語った。おけの上に円すい状に石を積み、重みで水分を均等に行き渡らせる