――人を殺した人と会う。死刑囚の実像に迫るシリーズ【3】 「“あの時”に時間を戻せたらいいのに、ということはいつも思います。ただ、もしも“あの時”に戻れるとしても、今の自分で戻りたいです。自分まで当時の自分に戻ったら、また同じことを繰り返してしまいそうだからです」 昨年9月中旬、宮崎刑務所の面会室。2010年に宮崎地裁の裁判員裁判で死刑判決を受け、当時最高裁に上告中だった奥本章寛(27)は、そう率直な思いを口にした。奥本が言う“あの時”とは、自分の手で家族3人を殺めた“あの時”のことだ。 ■「宮崎家族3人殺害事件」とは 2010年3月1日の早朝5時頃、奥本は宮崎市の自宅で生後5カ月の長男を浴槽の水に沈めて溺死させ、妻(当時24)と義母(同50)をハンマーで撲殺。そして日中はいつも通り会社に出勤して働き、夜9時頃、自宅近くにある会社の資機材置き場で長男の遺体を土中に埋めた。そのうえで第一発見