『時砂の王』早川書房 小川一水/著 遥か彼方、太古の昔より人々は剣を持ち戦ってきた。 ある者は愛する人を守るため、ある者は国の未来のため。 そうやって、彼らは今私が踏みしめるこの世界を守ってきた。例え自分が其処に居なくとも。 私はSFが好きだ。 こんなにも前を向いて、空を見上げる物語はないと思っているから。 SFは夢物語ではない。今いる世界、今立っている道の先にいつもある。 SF作家は半世紀も前からその来るべき未来を想像し、シミュレートしてきた。 アイザック・アシモフ は1950年、自著にて人工知能と人が共生するため、21世紀には彼らに対して「人間への安全性」「命令への服従」「自己防衛」というロボット三原則が必要だと書いた(当時まだ人工知能という言葉はなかった)。 そしてその21世紀の今、人間は自らの手で作り出した人工知能により、ものの価値観とは、言葉とは、見るとは、考えるとは、コミュニケ