検察側が読みあげた供述調書には、幼児を部屋に置いたまま、複数の男性との性交渉や夜遊びを繰り返した下村早苗被告の姿が綴られていた。1年半前の夏に発生した大阪二児遺棄殺人事件の初公判(3月5日)は異様な雰囲気に包まれていた――。3歳の桜子ちゃんと1歳9か月の楓くんはなぜ死ななくてはならなかったのか。ノンフィクションライターの杉山春氏が現代の病理、ネグレクト(育児放棄)の闇を照らす。 * * * 子供が餓死に向かう時、母親は、男性と過ごし、お洒落をして大阪や地元の三重県四日市で遊び回る様子をSNSで報告していた。だが公判によれば、相手の男性たちはそれ以上に数が多く、関係をもった時期も重なり、錯綜している。 早苗さんは明るく、感じのいい笑顔で男性たちと出会う。相手の好意に寄り添い、するりと家に上がり住み込んでしまう。次第に子どもを置いて家を留守にする時間が長くなっていく。 事件発覚直前の7月29日