『精神分析黒書』が、精神分析を科学でもなければ精神療法でもないとしたのに対し、『反黒書』は、『黒書』の著者たち(の一部)が提唱するTCCこそ、科学でもなく、精神療法でもないと切り返す。 精神分析は、患者を自由連想に委ね、患者自身の言葉から患者の心のありようを探っていくが、TCCは患者の話に耳を傾けることをせず、三択式のアンケートに回答させ、その結果をフィードバックすることで患者の心のありようを統計学的に判断する。人間のこころを数値化可能とみなし、「評価」と「操作(management)」の対象にしようとするのだ。こうした物質主義的なこころの捉え方は、こころの苦しみを脳の特定部位の損傷に還元する当節流行の脳科学や精神外科と結託し、向精神薬市場によって支えられていると『反黒書』は言い立てる。 認知行動療法は、機能不全に陥った精神的部位の表象[IRM画像]にはたらきかけることが可能な理性的方法に