なぜ自分は、この列に並んでいるのか? その先に何があるかも分からない。そして最後尾も見えない。でも、列から抜けるわけにはいかない。そのため、前後に並ぶ人との間には緊張感が漂う。この展開で思い出されたのは、安部公房の『壁』だった。読者としては、物語から何か意味を読み取ろうとするが、それが正しいのかどうか分からない。しかし、そこに解はなく、自らが置かれた状況によって変わるのかもしれない。何度でも読み返すべき小説だと思う。 沸騰する地球
なぜ自分は、この列に並んでいるのか? その先に何があるかも分からない。そして最後尾も見えない。でも、列から抜けるわけにはいかない。そのため、前後に並ぶ人との間には緊張感が漂う。この展開で思い出されたのは、安部公房の『壁』だった。読者としては、物語から何か意味を読み取ろうとするが、それが正しいのかどうか分からない。しかし、そこに解はなく、自らが置かれた状況によって変わるのかもしれない。何度でも読み返すべき小説だと思う。 沸騰する地球
皆さんは“ワーキングホリデー”(Working Holiday:通称「ワーホリ」)という制度をご存知であろうか。フツウの仕事をしているサラリーマンには縁遠い言葉ではないか。 ワーホリとは主として先進国どうしが二国間協定を締結して、たがいに相手国の若者(一般に18歳以上30歳まで)に対して数年間(通常は1年間、延長して2年間)の就労可能なビザを発行する制度である。 両国間の相互理解・親善交流促進を目的としている。協定相手国の若者が自国に長期滞在する場合に、資金不足をカバーするために滞在期間中の就労を許可するという趣旨である。 オーストラリアは移民政策においては高度人材・専門職人材を選別して移住許可している(本編10回、11回ご参照)。他方オーストラリアで恒常的に不足している労働力(未熟練労働者・単純労働者)を供給しているのがワーホリ制度である。 その規模は毎年20万人くらいで推移しているよう
「イエスマンを置いてはいけない」という言葉は、ビジネスの現場でもよく耳にします。しかし、大地丙太郎監督は「イエスマンがいないと作れない」と言い切ります。その真意とは・・・? 大地丙太郎(だいち・あきたろう)氏:アニメーション監督。『ナースエンジェルりりかSOS』(1995)でアニメ監督デビュー。主な作品に『こどものおもちゃ』(1996)、『セクシーコマンドー外伝 すごいよ!!マサルさん』(1998)、『十兵衛ちゃん』(1999、総監督)、『フルーツバスケット』(2001)、『信長の忍び』(2016)などがある。NHKで1998年から放送が開始した『おじゃる丸』は現在も放送中で、日本中の子供たちに親しまれている。 ★ この連載について ★ 1本のアニメ作品に関わるスタッフは100人以上。アニメーション監督は、そんな大所帯を率いて作品の完成を目指すプロジェクトリーダーだ。作品をちゃんとまとまっ
大型連休が目前となり、連休中に美術館でも行こうと計画されている向きも多いだろう。実は筆者(中村)もそうなのだが、美術館にはそれなりに興味はあるのだが、足を運んでもなぜだか落ち着かない。恥ずかしながら、有名な作品を短時間見ただけで終わりというのが毎度のパターンである。世の注目を集めるような展覧会は来場者も多く、ゆっくり見られないという事情もあるのだが、なぜなのか。いろいろ考えてみて、やはり美術館そのもののことをよく知らないからだという結論に思い至った。実際のところ、美術館はどのような運営をしているのか、そうした疑問に丁寧に答えてくれるのがこの本である。 美術館について歴史からたどり、中で働く人々の考え方や動き方について教えてくれる。日本と欧米では美術館のおいたちにも大きな違いがあることがわかる。日本でも松方コレクションや大原コレクションなどがあり、富豪によるコレクションから始まるという部分は
カズオ・イシグロの2005年の作品である。新刊書ではない。だが、年明けに同名の民放のドラマが始まり、書店の中ではこの文庫を平積みで売っているところも多い。以前からこの作品はずっと気になっていたが、なかなか読む機会に恵まれなかった。これを機会に読んでみようと思い手にとった。 カズオ・イシグロの作品に注目した理由はもう一つある。昨年の夏、NHKで放送していた「カズオ・イシグロ 文学白熱教室」という番組を偶然見て、強く印象に残っていたからである。学生などを相手に、「なぜ小説を読みたいと思うのか」「なぜ我々は小説を書きたいと思うのか」などについて熱心に語っていたイシグロの言葉に思わず聞き入ってしまった。 筆者(中村)のような仕事をしていると、毎日、現実に起きている日々のニュースや事象に追いついてゆくことで精いっぱいで、なかなか小説や文学作品を読む時間的、心理的な余裕がない、というのが正直なところで
15年ぐらい前から、そのころに美大に入学した身内の影響もあって、それまでまったく興味のなかった美術に少し興味を持つようになった。仕事でひとりで海外に行く機会が増え、同じ街をなんども訪れ、観光名所などを一通り巡ってしまうと、休日などの空いた時間は、美術館で開館時間から昼過ぎまで時間をつぶして、夕刻からパブやカフェでワインやビールを飲みながら仕事をして過ごすようになった。はじめのうちは、ガイドブックで「必見」とされている絵画や彫刻などをまわって、気に入った絵の前のベンチに腰をかけて眺めるだけだった。 あるとき、放送が始まったばかりの「美の巨人たち」というテレビ番組で、ターナーの「雨、蒸気、速度ーグレート・ウエスタン鉄道」という一枚の絵の特集を見た。作家のターナーはイギリスを代表するロマン主義の風景作家であるが、それまで作品はおろか名前も聞いたことがなかった。番組はその絵の描かれた時代や作家の歴
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