レプターに住む詩人ジオと大男アースンは、四本腕の少年泥棒スネークに出会う。世界にはこういった奇形の人間も結構いるのだ。そしてこの三名は白き女神アーゴの化身の母親を名乗る司祭に出会い、敵国とされる謎に包まれたアプターへ向かうことになる。白き女神アーゴの化身(つまり司祭の娘)はアプターに誘拐されていた。彼女はジオ・アースン・スネークに、アプターの宝石を奪い、娘を取り戻そうとして航海に出る……。 舞台は恐らく遠未来の地球で、核戦争で文明が一時衰退し、また少しずつ回復しつつある。これを背景に、「善悪とは立場によって変わるものだ」という、掴み所があやふやなテーマが、波乱万丈の冒険物語に乗せられ、絢爛たる文章表現に彩られて展開する。 某所で法月綸太郎『密閉教室』が中二病であるとの指摘を目にしたのだが、高校生が高校を舞台に(リアルで聞いていると)恥ずかしい言動をとる程度の『密閉教室』で中二病と言っている