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2008年4月6日のブックマーク (29件)

  • Passion For The Future: 土間の四十八滝 町田康

    土間の四十八滝 スポンサード リンク ・土間の四十八滝 昨年、こんな芸能ニュースがあった。 ・布袋、町田康さん殴る http://hochi.yomiuri.co.jp/entertainment/news/20070726-OHT1T00101.htm 「布袋と町田さんは旧知の仲で、布袋の曲の作詞を町田さんが手がけたり、布袋が昨年発売したコラボレーション・アルバムにも町田さんは参加している。趣味でともにバンド活動を行ったりもしているが、音楽活動を巡り双方の意見にい違いが生まれ、トラブルとなったようだ。」 表現者としてエッジがたちまくる二人は実生活でもちゃんと殴り殴られるような仲なのだなあと感心した。作家として権威のある文学賞を総なめにしている町田康だが、その危険なパンクっぷりは物なのだなと納得した。 これは第九回萩原朔太郎賞を受賞した詩集だ。中身はポエムというよりむき出しのソウル。そ

  • http://mainichi.jp/enta/book/news/20080330ddm015070119000c.html

  • 2008.4a / Pulp Literature

    ★★★ G. / John Berger 栗原行雄 訳 / 新潮社 / 1975.7 / ブッカー賞 ISBN 978-4105061012 【Amazon】 ISBN 978-0747529088 【Amazon】(原書) 1886年。物語の主人公Gは、イタリア人の父とイギリス人の母の私生児として生まれた。長じてからは女を口説くことに情熱を捧げ、政治の混乱を後目に浮き名を流していく。 一九二〇年以後トリエステがイタリア領となり、ファシスト党が公用語としてスロヴェニア語の使用をいっさい禁止した時、あるイタリア人の医師はこう尋ねられた──でも百姓たちは症状をどうやって説明したらいいんです、イタリア語が話せない連中は? 医師は答えた──牛は獣医に自分の病状を説明する必要なんてないでしょうが。(p.232) これはけっこう厄介だったかな。まるでフランスの小説みたいだった。たとえば、デュラスとかロ

  • SFとファンタジーの違い 〜テッド・チャンのばあい - らいたーずのーと

    S-Fマガジン 2008年 01月号 [雑誌]出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2007/11/24メディア: 雑誌 ■『SFマガジン』2008年1月号。テッド・チャンというアメリカSF作家の特集らしい。45ページ以下のエッセイ(特集の文章はすべて大森望訳)が面白い。タイトルは「科学と魔法はどう違うか The Difference Between Science and Magic」。テッド・チャンにとっての「科学と魔法」すなわち「SFとファンタジー」の違いについて言及した文章だ。 もちろん、科学と魔法という区分とSFとファンタジーという区分は必ずしも一致しない。しかし、少なくともテッド・チャンは、その両者の区分に関連性を見ているようだ*1。そのうえで、科学と魔法との違いを次のように説明する。  わたしの考える魔法と科学の質的な違いはこういうことだ。魔法の効力は、その行使者に依存する

  • テッド・チャン『あなたの人生の物語』 - logical cypher scape2

    最近、自分の中でプチSFキャンペーン。 ディックの次は、チャン。 センス・オブ・ワンダーってこういうものかということを感じた。 バビロンの塔 のっけから、舞台が古代バビロニア。 バベルの塔を建設している人たちの話。大工たちが、塔の中で生活してる様子がリアルに描かれてる。 古代の世界観そのままで、塔を上っていくと、途中で星や太陽よりも高い位置に行く(山を登って雲より高い位置にいくように)。 そして、天空の丸天井を石工たちが掘り進んでいくのだ。 太陽よりも高い位置で暮らしている様子が面白い。日が足下から差すのだ。しかもそこで、家族で畑を作って暮らしていて、子供が生まれたりしている。 理解 超能力を使えるようになった主人公の話。 次第に能力がパワーアップしていく描写は面白かったのだけど、最後の超能力バトルの決着がよくわからなかった。 ゼロで割る 数学的な概念を、人間(関係)のアナロジーとして描い

    テッド・チャン『あなたの人生の物語』 - logical cypher scape2
  • グレッグ・イーガン『万物理論』 - logical cypher scape2

    大作なので、あまり間をおかずに読めてよかった。 扱われているトピックの数が非常に多く、その点で他のイーガン作品と趣を異にしている感はある。 この作品では、万物理論というタイトルに違わず*1、理論物理学が扱われている一方で、バイオテクノロジーもまた重要な科学的トピックスである。 だが、それとは別に、未来社会における様々な社会的問題も扱われている。他のイーガン作品において、このような要素がないということはもちろんないが、メインアイデアとなっている理論物理学ネタと同じくらいのウェイトを作中で占めている点は他の作品と異なるところだと思う。 この作品を分かりにくくしているとすれば、それはTOE*2の難解さではなく、作中で扱われているトピックスが多岐にわたる上に、そのどれもが重要であるためではないだろうか(TOEは確かに難解だが、そもそも内容を理解しなくても読んでいける)。 あらすじ さて、そんなわけ

    グレッグ・イーガン『万物理論』 - logical cypher scape2
  • グレッグ・イーガン『順列都市』 - logical cypher scape

    今年の1月に待望の増刷がかかったイーガンの長編SF 1994年に発表され、イーガンの長編SF作品としては2作目にあたる編だが、イーガン作品の真髄といっても過言ではないような出来。 かなり脳のあちこちをかき回してくれて、知的刺激に満ちている。筋とはやや離れるが、興味をかきたてられるトピックや仕掛けも多い(例えば、各章タイトルが「順列都市」のアナグラム変換になっていたり(しかも実はアナグラムは編の核をなす塵理論とも関係がある)、未来社会では気象をコントロールする技術の開発が行われていたり)。 しかし、なんといってもこの作品の中核であり、またイーガン作品に共通して見られるテーマは「アイデンティティ」である。いや、同一性というよりはイーガンにならって「不変量」と言いたくなるのだけど。 あらすじ 物語は2045年から始まる。人間の脳をスキャンしてコンピュータ上の仮想空間で走らせる技術が生まれ、

    グレッグ・イーガン『順列都市』 - logical cypher scape
  • グレック・イーガン『ひとりっ子』 - logical cypher scape2

    待望の新短編集。 今回収録されてる作品は、どれも結構難しい。 「行動原理」「真心」は、イーガン作品ではよく出てくる、アイデンティティもの。というか、自分の趣味嗜好をコントロールできてしまう話。なんだけど、この手のイーガンの話は希望を感じさせるものが多いなか、この2作はかなり皮肉っぽい。 「ふたりの距離」もそういう意味で、上の2作と似ているけれど、こっちはかなり強烈。こういう究極のところへ連れて行ってくれるのは、イーガンならでは。 「決断者」はよく分からなかった……。 この短編集で一番面白かったのは、なんといっても「ルミナス」! これはやばい。 ストーリーは、主人公がある世界の秘密を見つけ出したが、この秘密を悪用しようとする奴らがいて、彼らの手から秘密を守り抜き、悪用できないようにしなければなならい、という単純至極なものだけど、その「世界の秘密」とやらの正体がとてつもなくハード。単純なストー

    グレック・イーガン『ひとりっ子』 - logical cypher scape2
  • フィリップ・K・ディック『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』 - logical cypher scape2

    この手の、夢かうつつかみたいな話は、ほんとに面白い。 幻覚から覚めたと思ったら、まだ幻覚だった、というシーンは、今となっては確かにベタかもしれないが、やっぱり面白いな。 ニューヨークの自分の事務所に戻ってきたはずなのに、そのデスクの陰に怪物が隠れていたところを見つけるシーンとか。 しかし、これの当に面白いのは、幻覚だと思っていたのに、現実世界になってしまっているところがあるところだ。しかも、未来の世界に。未来世界の幻覚を見たのか、当に知覚だけタイムスリップしてしまっているのか。 そして、パーマー・エルドリッチの遍在。それはまた同時に、神が世界に遍在していることでもある。 悪夢的でありながら、同時に希望でもあるような、幻覚と神の遍在。 未来予知能力者とか、E(進化)療法とか、話のメインとはあまり関係のないSFガジェットも、未来とか人類の進化とかいったことと、幻覚で見る世界が未来世界である

    フィリップ・K・ディック『パーマー・エルドリッチの三つの聖痕』 - logical cypher scape2
    inmymemory
    inmymemory 2008/04/06
    "現実がもはや堅固なものではない悪夢は、しかし同時に、神がすぐそばにいるという希望でもある"
  • フィリップ・K・ディック『ヴァリス』 - logical cypher scape2

    思っていたほど、読みにくくなかった。 意外とすんなり読める。 死と救済についての物語である。 救済とは、永遠のことでもある。 主人公(わたしかつファット)は、ある1人の女性の自殺を契機に、苦悩し始める。 この物語は、いかに死を受け入れるか、ということを考えていく過程だ。 ファットの友人のケヴィンは、死んだ飼いについて考え続けている。 彼らは、各人各様に、死と神について考える。もし神がいるのなら、何故彼女は死ななければならなかったのか。 神の啓示を受けたファットは、神の存在を確信している。だからこそ、なおのこと、彼女の死は理不尽なものだ。 そこで、ファットが提示する世界観は、ある意味、伝統的な西欧の世界観で非常に単純なものではある。 仮象としての現象界と永遠なる超越宇宙の二層構造だ。 現象界には時間と狂気があるが、超越宇宙は永遠で理性的だ。そして、超越宇宙は、現象界を癒すために現象界に降臨

    フィリップ・K・ディック『ヴァリス』 - logical cypher scape2
  • 『幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク - logical cypher scape2

    実は、クラーク読むの初。 大御所とか古典SFは、ほとんど読んでいない……。 50年代に書かれているものだから、やっぱり色々と変だなあと思うところはあるけれど、それは仕方ない。 物語として面白いのは、青年が密航を企てているところ。 しかし、SFとして面白いのは、最後のカレレンの演説。 集合として一つの知性となる、そしてそれはさらに巨大に、巨大になっていく。なんてプログレ。 こういう方向での未来、進化というのは、もう今の時代では書けないだろうけど。イーガンが面白い、とは全く別の意味で、面白い。 このカレレンという地球外知的生命体とのコミュニケーション(?)は、ストーリーを面白くしている。この作品をSF的に支えているのは人類の進化だけど、ストーリー的に支えてるのは、こっちの方でしょ。人類、カレレン達、上主心の非対称性がもたらす丁々発止というか何というか。 それから、ちょっと中核からはずれるアイデ

    『幼年期の終わり』アーサー・C・クラーク - logical cypher scape2
  • ガルシア=マルケス『予告された殺人の記憶』 - logical cypher scape2

    初めてのマルケス。 残念ながら(?)これはマジックリアリズムの作品ではなくて、実際に起きた殺人事件をもとに描かれた小説。 ミステリ、というわけではないが、ある殺人事件が起こるに到るまでの経緯の話なので、ミステリ的な楽しみで読むことができる。 訳者あとがきによると、「文学的仕掛け」とかもあるらしいのだが、そういうことにはあまり気付かなかった。どちらかといえば、「大衆小説」として読んだ*1。 そういう意味では、ブンガクブンガクしていないのでさらっと読める作品だけれど、登場人物の名前を覚えるのが大変。サンティアゴ・ナサールとかアンヘラ・ビカリオとかクリスト・ベドヤとか。名前が複雑なだけならまだしも、例えばサンティアゴ・ナサールの父親はイブラヒム・ナサールなのに、母親はプラシダ・リネロといって、どうも夫婦別姓っぽい。田舎が舞台になっているので、家族だの親戚だのも結構出てくるのに、姓名を見ただけでは

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  • 『カラマーゾフの兄弟』ドストエフスキー - logical cypher scape

    ついに読みました、カラマーゾフを。 常々、自分の文学レベル(?)を上げるためには読まなければならないだろう、と思いつつも、ずっと前に読んだ『罪と罰』の「ただひたすらに長い小説だった」という印象が残っていて、なかなか手をつけられなかった。 確か、これを友達から借りたのは、4月か5月のことだったと思う。でも、8月末まで手にすら取っていなかった。 最初は、「長いし、とりあえず「大審問官」の章まで読めばいいか」という程度の気持ちで読み始めたのだが、読んでみるとこれが、止められない面白さ。 長い小説なので他の作品を読むよりは時間がかかっているとはいえ、思いの外早く読み終わった。あっという間、というわけではないけれど、ぐいぐいっと読み進められた。 「なんだこれは、すごい面白いぞ」とは思ったけど、果たして文学レベルが上がったかどうかは分からない(^^; キリスト教とか出てくる登場人物達の思想とか何とかそ

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  • 『スローターハウス5』カート・ヴォネガット・ジュニア - logical cypher scape2

    これって戦争小説だったのか。 全く何の前提もなく読んだから、その点で面らった。 円城読んだときに「ヴォネガットの筆致」とか書いてあったから、そろそろヴォネガット読まなきゃだめか、と思って、一番有名だからとりあえずこのを手に取ったのだけど。 面白いのか、つまらないのか、さっぱりわからなかった! 読み終わったあとに感想が特に出てこないというのは、基的にはつまらなかった、ということなんだけど、読んでいる最中はするすると読めて「そういうものだ。」が出てくるたびに楽しくなったり悲しくなったりして読んでいたのは、必ずしもつまらなかったともいえないような気もする。 トラファマドール星人の思想とかも、面白かったし。 ドレスデン爆撃という悲劇を語るには、このように分断した形でしかできなかったのだ、的な解説があった気がするけれど、それはもちろんそのとおりとして、それよりもさらに何か他のもの(人生とか?)

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  • ポール・オースター『シティ・オブ・グラス』 - logical cypher scape

    ヴォネガットはSFという形式を使って、オースターはミステリという形式を使って、しかしSFでもミステリでもない何かを書こうとした。 その何かとは、つまり、固有性の喪失なのではないだろうか。 『スローターハウス5』*1というのは、「そういうものだ」という言い回しによって、ある種の体験の特権性を剥ぎ取ろうとしていた。つまり、「死」とは特別なことではないということだ。そして「死」の特権性を剥ぎ取ることによってようやく、ドレスデン爆撃について書くことができたのだろう。 オースターでは、『幽霊たち』*2にしろこの『グラス・オブ・シティ』にしろ、登場人物から固有名詞が剥奪されている。いや、剥奪、というのは正確ではない。彼らにはれっきとした名前がある。しかしもはやそれが意味をなしていない。主人公のクィンは、ウィリアム・ウィルソン名義で作家をしているが、引きこもりのような生活をしていて、社会的にはクィンとい

    ポール・オースター『シティ・オブ・グラス』 - logical cypher scape
  • ポール・オースター『鍵のかかった部屋』 - logical cypher scape2

    これでニューヨーク三部作は読み終わった*1。 ニューヨーク三部作は一貫して、書くことと自分と他者が曖昧になっていくことがテーマになっている。 書くこと(そしてあるいは読むこと)というのは、自分が他者になり、他者が自分になっていく体験なのだ。 『幽霊たち』は、そのテーマに対してとてもミニマルな手法で作られている。 『シティ・オブ・グラス』は、歩いていた跡を地図に書くと文字になっているという、大仰な(新格ミステリ的な?)仕掛けが施されている。 それらに対して、この作品は、「文学的な」ないしは「私小説的な」雰囲気が強くなっているかもしれない。フォーマットはミステリ的だが、もはやミステリ的な仕掛けはほとんどなくなっている。 「鍵のかかった部屋」は自分の頭蓋骨の中にある。自分の中に見知らぬ誰かがおり、自分の外には見知ったものしかいない。 失踪したファンショーを追ってパリまでやってきた「僕」は、つい

    ポール・オースター『鍵のかかった部屋』 - logical cypher scape2
  • 高橋源一郎『日本文学盛衰史』 - logical cypher scape2

    高橋源一郎ってまだ読んだことないんですよ って先輩に言ったら、 これを読め、と貸してもらった一冊。 その場に居合わせた別の先輩からも、「ちょーおもしれぇよ」のお墨付き。 文庫にして658ページ、97年から00年にかけて書かれた作品。 という、普段書かないような説明から始めたのは、あまりにすごくて一体何から書けばいいのか分からないから。 帯に「おもしろくてためになる」「奇人変人乱れ飛ぶ」という煽り文句があるのだが、 そんなんではきかない。 とかく、抱腹絶倒、爆笑に次ぐ爆笑が待っている。 石川啄木は援交女子高生を買いまくり、田山花袋の『蒲団』はAVになってしまう。 明治と現代が複雑に入り混じって物語は進行していく。 明治あるいは近代文学なんてほとんど読んだことがないし、文学史にも明るくないが、 これを読むと、明治の文豪がぐっと身近になる。 少なくとも、現代の作家くらいには身近に感じられるように

    高橋源一郎『日本文学盛衰史』 - logical cypher scape2
  • 『赤頭巾ちゃん気をつけて』『サマー/タイム/トラベラー』 - logical cypher scape2

    2作品とも、頭のいい高校生の無力感とかすかな期待、みたいな話です そうやってくくっちゃうと、西尾維新も同じようなものになりますね 『赤頭巾ちゃん……』の言葉でいうところの「知性」という奴が、多分あんまりいいことをもたらさないんじゃないかと思いつつ、でも「知性」を持ち続けていたい、というか持ってしまったのだからこれはこれでいいものなのではないか、というか 「知性」と「感情」がぐるぐると混ぜ合わさってどうすればいいのか、と 普段はシニカルにいることも出来るし、「感情」を覆い隠すなんてわけないけど、それじゃあどうしようもないことも分かっている 人を動かし人が動かされるのはつまるところ「感情」であって、それをいかに「知性」においてコントロールするのかあるいはいかに発露させていくのか、というのが複雑な脳神経系を獲得した人間の普遍的な課題なのだと思う そういう思いこそが単なる青春特有のものだとしても、

    『赤頭巾ちゃん気をつけて』『サマー/タイム/トラベラー』 - logical cypher scape2
  • 『暗闇の中で子供』舞城王太郎 - logical cypher scape

    すごい、すごい、凄すぎるぜ、舞城。 これはもう最高傑作といってしまっても良いのではないのだろうか。 90年代後半の“地獄”を如何にリハビリテーションしていくのか、あるいは、如何に拘り続けていくのか。 これは、自分のあるいは日の一つの大きなテーマのように思う。 例えば斎藤環は、そのようなテーマをとりあえず「震災文学」と呼ぶ。 震災、オウム、酒鬼薔薇。 舞城は、真っ向から酒鬼薔薇へと立ち向かう*1。 ハンニバル・レクターが登場する。 レクターが透明な箱に閉じこめられているシーンがあるが、これは逆でむしろ自分たちの方が箱に閉じこめられているのではないか、と主人公が自問する。 それから、この作品では境界線についても語られる。くたくたになってほとんど見分けがつかないけれど、境界線というものがあるのだ、と。しかし、その境界線は当に存在しているのだろうか。 「こちら側」と「向こう側」があって、自分た

  • 『九十九十九』 - logical cypher scape2

    再読した。 前回これを読んだときは、「自分のやりたいことは全部やられた」的なインパクトを喰らった。 今は、自分が小説で書きたいことは変わってきた*1ので、そういうショックはなかったけど、しかしやはりすごいなあと思う。 類似のテーマではしばらくは他の誰も書けないのではないだろうか、と思う。 映画では『未来世紀ブラジル』がかなり究極のところまで押し進めている*2のだけど、小説ではこの『九十九十九』がやってのけている、という感じ。 JDCトリビュートという、いわば流水の作品の二次創作としてあるせいだろうけど、とにかくネタが多い。 流水は一つも読んでいないから何とも言えないけど、多分流水のせい。 駄洒落もそうだけど、講談社ノベルス周辺の人名への言及が異常に多い。 舞城は、そうでなくてもバカバカしい文章を書く人だけど、このネタの多さがバカバカしさというか滅茶苦茶さを増している。 やはり舞城作品の中で

    『九十九十九』 - logical cypher scape2
  • 『Self-ReferenceENGINE』円城塔 - logical cypher scape

    こいつはすごい。 『九十九十九』をあっさりと越えてみせた。 このような推薦文が帯に書いてある。 円城塔は書でもって、かのオイラーの等式を文芸で表現してやろうと企図したのではなかろうかと想像する。出自の異なる互いに無関係な二つの無理数(永遠に続く感触のある物語群)を虚数空間(小説空間)に放り込み、ある操作をしてそこに1を足すと(メタレベルでもって全体を構成すると)、0になる(虚無が、人生には深遠な意味などない、が導かれる)。 神林長平 無数のソラリスの海が語る、愚にもつかないバカ話。 飛浩隆 読んでいない人にとっては、おそらく、何のことを言っているのかさっぱり分からないだろうが、読み終わってみるとまさにこのふたりの言っている通りの作品なのである。 すさまじい。 この作品が、所謂「文学」でもミステリでもなく、SFのレーベルから出版されたことを、SFというジャンルは誇ってよいと思う。 この作品

    『Self-ReferenceENGINE』円城塔 - logical cypher scape
  • 古川日出男『13』 - logical cypher scape2

    世界が確かに在るように、神も確かに在る。 単語が、文が、イメージが、登場人物たちが、絡み合っている、そんな作品。 古川日出男は、以前から名前をちらちらと目にしていて気になる作家ではあったのだけど、とっかかりがなくて読めていなかった。 最近、三島賞を獲ったのを機に探して、手に取ったのが『13』 それが彼のデビュー作(正確に言うと再デビューみたい?)であることは、読み終わって、今この文章を書くために検索かけている最中に知った。 神との出会い 非常に映像的な小説で、またモチーフが神でありながらそこへのアプローチが唯物的なために、瀬名秀明の『BRAINVALLEY』を想起した。 しかし、無論内容は全然違う。 話は大きく分けて、第一部と第二部に分かれている。 第一部では、15歳の少年、響一の、ザイールのジャングルにある狩猟民族の村での生活と、同じくザイールの農耕民族の少女ローミが、キリスト教の聖者と

    古川日出男『13』 - logical cypher scape2
  • 古川日出男『ベルカ、吠えないのか』 - logical cypher scape2

    歴史とは物語であり、物語とは歴史である。 この小説には、1943年から199X年までの歴史=物語が書かれている。 偽史ないし架空史を描いた小説は数多くあるだろうけれど、これはそうした作品を圧倒するだろう。 何故か。これが犬の歴史=物語だからだ。 犬は数を数えることができない、ということが何度か繰り返されている。 また、犬と同化していくことになる少女もまた、数えない。彼女は、日付を数えず、ゼロの時間を過ごすことで、犬族と同化していく。 この歴史=物語の紀元もまた、ゼロ時間にあった。 かつてゼロ時間を過ごした、数を数えない種族、それが犬族だ。 彼らは人間たちに振り回される。彼らは、人間たちの「個人的な関係」*1に振り回される。 数えることのできない彼らは、歴史=物語という力もまた持つことが出来ない。それゆえ、歴史=物語という力に、あるはその力を持つ人間に振り回されてしまうのだ。 犬たち、少女*

    古川日出男『ベルカ、吠えないのか』 - logical cypher scape2
  • 古川日出男『ハル、ハル、ハル』 - logical cypher scape2

    あとがき(?)に「速さこそがモラル」とあるが、とにかくあっという間に読めた。 実際、頁数もそれほどあるわけではないが、文章が速い。 パラパラっと見てみるとわかるが、わりと紙面が空いている。描写が少ない。そう、描写が少ない。 モノローグが多い。語り手ないし主人公の心の中での発話。 だが、それも内面が描写されているわけではないし、発話として考えると不自然な言い回しが多い。 やはりあとがきに「新しい階梯に入った」とあるが、古川は、新しい、日語を、作り上げようとしている。 つまり、自然主義的な*1日語ではない、日語。 文語体でも口語体でもない、日語。 そして。 そ、し、て。 現在形。 文体のリズム、とか、スピード感、とか、いうと、舞城王太郎の名がすぐに出てくるだろう*2。 ただし、舞城の文体が、相当部分、舞城の個人的センスに負っていて、天然でやっている部分が多いように思われるのに対して、

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  • 『アサッテの人』諏訪哲志 - logical cypher scape

    芥川賞が載ったので、文藝春秋を読んできた。 あと、群像と文學界にそれぞれ、諏訪哲史へのインタビューがあったのでそれも読んだ。 『アサッテの人』 一言でまとめてしまうならば、「詩的(私的)言語は可能か」*1というテーマについての話。 そんな話は前このブログでしていた。 ローティはこれをさらに拡大解釈して、このような「異化」を行うこと=メタファーをつくることが自己創造であると考え、自己創造を行う人のことを詩人と呼んだ。 ちなみに、ロシア・フォルマリズムでは、「異化」を担う言葉のことを「詩的言語」と呼ぶ。 さて、この「異化」というのは、続いて「自動化」というのを引き起こす。 「異化」作用のある「詩的言語」は、確かに最初「人の目に障り、耳につく」のだが、人はそのよう表現に対して次第に慣れていってしまう。新奇な表現も、いずれ違和感を覚えなくなり、普通に使うようになっていく。これが「自動化」である。

    『アサッテの人』諏訪哲志 - logical cypher scape
  • インチキ20世紀文学講座その②(磯崎憲一郎「肝心の子供」文藝冬号) - kenzee観光第二レジャービル

    司会者「インチキ20世紀文学講座の時間です。特別講師に西中島南方産業大教授、kenzee教授をお招きしてお送りしてまいります」 kenzee教授「あ~kenzeeです。文藝賞受賞作「肝心の子供」を読み解きつつ、20世紀文学とはなんだったのか? これについて皆さんと一緒に勉強しましょう。エ、前回は「肝心の子供」の梗概、そしてこの小説が20世紀文学のさまざまな手法、方法論を吸収して書かれた作品だ、と述べました。キミイ、この小説の作者はどういう人物なのかね?」 司会者「プロフィールでは、「42歳、千葉出身。東京都在住。早稲田大学商学部卒。現在、会社員。とあります。やはり作家を輩出しまくってる早大出身でしたね。ところでkenzee教授の西中島南方産業大って偏差値ナンボくらいなんですか?」 kenzee教授「32」 司会者「ありえない数字ですよ、ソレ。ヘタすりゃ名前だけ書きゃ入れる世界ですよ」 ke

    インチキ20世紀文学講座その②(磯崎憲一郎「肝心の子供」文藝冬号) - kenzee観光第二レジャービル
  • 一斗缶 : 世界一遅い07年ベスト10(未完)

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  • 『先端で、さすわ さされるわ そらええわ』 川上未映子 : アスキービジネス・Book Review トヨザキ社長が選ぶ この本くらい読みなさいよ!

    最新記事必読記事へ リアルイイクラ納会はIT媒体の作り手と読者の新しいコミュニティだったのはないか 20日木曜日の夜、市ヶ谷のオフィスでTECH.ASCII.jp主催の忘年会イベント「リアルイイクラ納会2018」が開催された。TECH.ASCII.jpの3人とともに、他メディアの記者、... 飯田橋で語り合うクラウド、機械学習、FinTech、サーバーレス、そして働き方 飯田橋クラウドクラブ(略称:イイクラ) スマホの紛失対応がチャットでできるエムオーテックスのSyncpit スタートアップのデータセンター利用を支援「スタートアップ企業支援プログラム」 マネージドMariaDB、Azure Machine LearningサービスなどがGA MS主導のOSSプロジェクト「Virtual Kubelet」をCNCFに寄贈 “人間+AI”の新たな働き方、アクセンチュアが道のりを説明