「今度SI(システムインテグレーション)の責任者になった冨永という男に一度会ってもらえませんか。私が言うのも何ですが大変な人物ですので」。 「取材ですか」。 「いや、取材はやはりちょっと・・・。夜、会食をセットします」。 「・・・。少し考えます」。 これは何のやり取りかと言うと、日本IBMの広報責任者と筆者の間に交わされたものである。時期は1991年か92年だったから、もう20年近くも前のことになる。 「冨永」とは、冨永章氏を指す。冨永氏はSE(システムズエンジニア)出身でありながら日本IBMの専務まで務め、“ミスターPM(プロジェクトマネジメントあるいはプロジェクトマネジャ)”と呼ばれた。日本IBMの社長・会長を歴任した北城恪太郎氏が「社長時代の功績は冨永を役員にしたこと」と振り返るほどの人物である。 1991年、冨永氏はSI推進本部長に就任し、日本IBMのSI事業、すなわちユーザー企業