トマ・ピケティは、その著作「21世紀の資本」の中で、「格差は常に拡大し続けるが、20世紀に例外的に格差を縮小したのは戦争であった」と述べている。確かに、20世紀の戦争は、非戦闘員も巻き込んで市民を多数殺害し、都市を空爆で壊滅的に破壊した。欧州も日本も、これまで巨万の富を築いてきた富裕層は、戦争で殆どの資産を焼失した。戦火が及ばなかったアメリカでさえ、その莫大な戦費は、インフレで目減りした富裕層の資産で賄われることになった。 敗戦により壊滅状態にあった日本で、未だ焼け野原から立ち直れない1947年に生まれた私たち団塊世代第一号は、そうした絶望の中に生まれてきた。私が生まれた湘南平塚は、日本海軍の火薬工場があったせいで、米軍の徹底的な爆撃を受けて市街地は、ほぼ100%殲滅された。その焼け跡に、戦争から帰還した兵士達と戦火を生き残った女性達、つまり何もかも失った若い夫婦が、平塚の海岸地帯に掘建て