本連載では、どんないい加減な論文でも掲載料さえ払えば載せてしまう「捕食ジャーナル」や、どんないい加減な発表でも参加料さえ払えば発表させてしまう「フェイク・カンファレンス」を取り上げてきました。今回は、ジャーナル(学術雑誌)の査読システムを欺いて、著者が自分の原稿を自分で査読してしまう「偽装査読(peer review rigging)」の例を紹介します。「フェイク査読(fake peer review)」などと呼ばれることもあります。 2012年、『酵素阻害および医薬品化学ジャーナル(the Journal of Enzyme Inhibition and Medicinal Chemistry)』の編集者は、ある著者が投稿した原稿に対する査読に疑問を持ちました。査読の内容自体は、原稿を好意的に評価したうえで一部の修正を求める、という平凡なものだったのですが、疑問だったのはそれにかかる時間