公的研究機関は、国全体のイノベーションの推進を考えるうえで重要な位置を占めている。しかし、企業や大学などと比べると、担うべき役割や研究のパフォーマンスについては、これまで十分に検証されてこなかった。公的な研究機関としての固有のミッションと、産業界に対する技術の橋渡し役となって国全体のイノベーションの底上げに寄与するという役割とを、どのように果たしてきたのかという視点から検討することが必要である。 本研究では、長期間にわたる客観的なデータに基づき、公的研究機関は期待された役割を果たしているのか、イノベーションの推進に寄与しているのかを把握しようと試みた。分析対象となった3つの公的機関に関する検証結果を、著者の1人である後藤晃ファカルティフェローに聞いた。 ――どのような問題意識から、この論文を執筆されたのでしょうか。 日本のイノベーションの構造はどうなっているのか、そしてどのように活発化すれ