議論の素材として、新卒一括採用は合理的であることを経済学の理論で明らかにしてみましょう。私は『情報通信革命と日本企業』で、これを次のように説明しました: 労働者のモラル・ハザードに対して通常の市場メカニズムにおいて可能なペナルティとしては、賃金に競争的な水準以上の効率賃金(efficiency wage)を支払い、労働者の事後的な成果が目標を下回った場合には雇用契約を打ち切るという戦略が考えられるが、この処罰は相対的な賃金格差によるものだから、全労働者に効率賃金を支払うことは定義によって不可能である。 ところが日本では失業率は、終戦直後の一時期を除いて世界でもっとも低いにもかかわらず、労働者の規律は失業率の高い国よりはるかに高い。これは採用を原則として新卒に限り、中途採用に際しては待遇がいちじるしく悪化する退出障壁によって労働者を企業に閉じ込めているからだ。 白紙の状態の新卒を採用して企業
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