テレビコマーシャルが主流になる中でメッセージを伝えるという広告の役割が希薄になってしまった。アートディレクターの副田高行氏はそう語る。今年の元日に新聞に掲載された全日空の「ニューヨークへ、行こう。」は、副田氏のデザインだ。広告の要素をすべて排除した新聞広告は、逆に、社会に対して確かなメッセージを伝えた。広告の力は何から生まれてくるのか。副田氏に聞いた。 ――広告効果についての議論が盛んですが。 ぼくらは芸術家でも何でもなくて、商品を売りたい、企業イメージを上げたいという広告主の意向が一番よく届く方法を考え、表現するのが仕事です。だから、広告主側にいい広告をつくって世の中に伝えたいという強い意思がないとできない仕事なんです。 ところが、実際は毎年決まった広告予算をただ単に消化している場合が多い。そういう環境からは、世の中に衝撃を与えるような広告は生まれにくいし、表現もなんとなく平板なもの