先月下旬、自民党が政権に戻ってからは12人目となる死刑執行が行われた。被害者遺族の多くは加害者の極刑を望み、世論の大半も死刑存続を求める。しかし、あえて加害者との新たな関係を模索する遺族もいる。それはどんな償いのかたちなのか。弟を殺害されながら加害者の死刑執行停止を求めた原田正治さんに聞いた。 京都府内で1983年、横転したトラックから遺体が見つかった。原田さんの弟で、トラック運転手だった明男さん(当時30)。初めは事故と見られていたが、翌年、雇い主の長谷川敏彦・元死刑囚ら3人が保険金目的で殺害したとして逮捕された。 ――明男さんが亡くなって32年。気持ちの変化はありますか。 「1年ほど前からキリスト教の教会に通うようになりました」 ――信仰を持つように? 「いえ、ぼくは無神論者です。あの世があるとも思ってません。ただ、殺された弟に対して懺悔(ざんげ)のような気持ちが湧いてきて……。もとも